骨折という外傷体験|トラウマからの回復

 

総合トレーニング参加者の水澤です。

先日、骨折してしまったのです!

みんな、人生で1度や2度は経験することかもしれませんね。

骨折は外科的な傷と思われるかもしれません。

でも、骨折も心理的なトラウマ体験となるのです。

骨折したことで毎日やっていた実践もできなくなってしまいました。

今回の骨折体験をパーツ心理学、トラウマ解放、定位反応、トラウマの再演

などの視点から語っていきます。

 

骨折という心的外傷体験は突然やってきました

 

それは突然のことでした。

「お母さーん、シャンプーなくなっちゃったー!!」

お風呂場から大きな声がしました。

仕事のことを考えつつ、シャンプー買い置きあったかな?

と立ち上がり勢いよく歩き出した瞬間!

角に足の小指をぶつけました。

頭の中がショートしました。

ものすごい痛みで呼吸も止まります。

とりあえず「テキトウナモノ...ツカッテ...」と声を振り絞って伝えました。

しばらくうずくまりました。

その後も痛みが続いたので、ちょっとぶつけただけではないと思いました。

後日、受診してレントゲンを撮ったところ、やはり骨折していました。

 

 

骨折から、さかのぼること数年⋯⋯

ソマティック心理に出会ってから、少しずつ内的感覚を育ててきました。

グラウンディングも毎日するようになってきたところでした。

  • 朝ベッドから降りた瞬間の足裏
  • 台所で料理しているときのぴったり感
  • 歯磨きをしているときのつま先スクワットの重感
  • 通勤中の電車で揺られて踏んばる時
  • カウンセリングしている時の足裏、お尻の重感

 

日常の多くがグラウンディングを実践する時間だったのに、

骨折したことで、それができなくなったのです。

優先されることは、骨折した小指が痛くないかどうか。

痛まないように、できるだけ骨折してない右足に重心を置いて

移動することに集中する歩き方がはじまりました。

 

 

単発性・ショックトラウマが起きたときの身体

 

トラウマの定義っていろいろありますよね。

その一つを挙げると、予期せぬ災害や事件・事故に遭遇した場合に、

心の外傷を経験しさまざまな心の反応を起こすこと、です。

今回の骨折体験は、その中の「単発性トラウマ」に分類されます。

実際、小指さんという身体のパーツにとってはトラウマです。

想像してみてください。

あなたが小指だとして、突然、すごい勢いで壁がせまってくるのです。

避けることができず、正面衝突するなんてこわすぎますよね。

あの瞬間、先ず立てなくなりました。

小指は、足の裏の5%くらいです。それでも立てなくなるのですね。

朝起きて一番に気を付けるのは、骨折してない右側に重心を置いて立つこと。

歩くときも、いかに骨折した足をそっとおろすか。

右足を長く地面につけておけるか、が重要になります。

意識は常に小指と足裏へいっていました。

ぶつけた翌日からグロテスクな紫色になり、腫れていく小指。

見ると、胸も痛みました。見ると痛みを思い出して、さらに痛んでしまうのです。

再体験ってこういうことか、と痛がる私を見ている私がそこにいました。

 

 

トラウマと定位反射

 

左小指を骨折して、もう一つ過敏になったことがあります。

自分の左側に誰かがくると、緊張感が走るのです。

過敏に左側に意識を向ける、という定位反応が強まっていました。

家族にも説明が必要でした。

今は小指を守るためにナーバスになっているから、左側から近づいてこないでほしい。

突然触って来ないでほしいと。ある意味ネタのようにして話していたので、

ウケ狙いで子どもたちが身体に触れてくることもありました。

家の外でも同じように気を張っていました。

  • スーパーのレジ
  • 電車の中
  • 歩道

意識してみると、周りにはいつも人がいます。

骨折した「左側の半径30センチ」に人が入ってくると、サッと身体が固くなります。

電車の中ではそっと身体の向きを変え、左足も一歩内側へ入れます。

他人が私の左足(しかも小指)を攻撃してくることはないと頭ではわかっています。

でも、身体は反応するのです。

 

こんな過敏さも、トラウマ反応の流れに沿っていますよね。

朝から晩まで神経を使う生活をしてみて、

トラウマと共に生きることの大変さが身に沁みました。

過敏でいることはエネルギーを使うので疲れます。

トラウマを想起させるものを避けるのも、反応の一つですよね。

思い出すことがつらいから、手元のスマホをずっと見続けたりしますよね。

過敏でいることをやわらげるのに依存って役に立つなと思ったりしていました。

過覚醒でいることのしんどさや、過覚醒から低域に落ちてしまう流れも体感しました。

 

 

活動範囲がせばまることで低覚醒領域に落ちる

 

仕事の行き帰りも、細心の注意を払って歩くのでいつもよりずっと時間がかかります。

仕事中にトイレへ行くのも躊躇します。帰宅途中に寄り道をする気にもなれません。

休日、リフレッシュのためにしていたジョギングも行けません。

何カ月も前から楽しみにしていた友人と会うのも断りました。

いかに動かずにいるか、が優先順位トップになりました。

そうすると、心も低域に留まりがちになります。

つまり、テンションが低い落ちた状態になるのです。

外の世界では緊張感が走る身体。心の内側では不自由が増えてうつうつとなる。

ここでも過覚醒と低域が起こっていました。

痛みがあること、身体を動かさないこと、これだけでもテンション落ちます。

さらに心的苦痛が伴ったら、誰でもうつになると実感しました。

でも、どんなことにも意味があります。

今回、低覚醒になることは、身体にとっては大きな意味があると思いました。

だって動かないと、それ以上危険な目に合わないですものね。

 

 

パーツ心理学で小指さんを労わる

 

小指を骨折して、立つのが不安定になっていました。

地に足をつけて、大地に身をゆだねるグラウンディングができなくなっていたのです。

でもね、不安定になって分かったのは安定があったということです。

今までどれだけ「小指さん」に支えられていたか気づかされました。

小指さんにありがとうと思いました。

 

 

そっと触ったりして、小指さんを労わります。

落ちついて身体を感じていると、ふわーっと感謝の念が沸いてきます。

今回は小指だけど、日々私を支えてくれている身体、

もっと言えば細胞たちに向けての気持ちも。

ここら辺は、パーツ心理学をやっていると感じやすいかもしれません。

これ、セッションを受けたら結構深まるかもなんて思っています。

今度、総トレの練習セッションでやってみようかな。

 

 

内側に意識が行き過ぎると、外側がおろそかになる

 

小指を意識をする日々が続きました。

身体の感覚にばかり意識を向けたので、外側の世界への意識がおろそかになりました。

例えば、左側の半径30cmには過敏なのですが、そこから外は把握していません。

そうすると何が起こるか。

遠くのものが把握できなくなるのです。

また、日常生活でうっかりミスが多くなりました。

空をゆっくり見たり、遠くを見渡して歩くことがなくなりました。

お財布を忘れて仕事に行きました。

大事なハンカチを落としました。

そして、そのことに落ち込みました。

 

 

いったり来たり、少しずつ試してみる

 

ありがたいことに、身体は少しずつ回復していました。

ここからは回復していることを確かめるプロセスが多くなります。

右足と左足の着地時間に差がなくなってきたことに気づく。

自転車をこいで痛くないことに気づく。

ビーサンだったら普通に歩けることに気づく。

そこで、いつもグラウンディングしていた台所でおそるおそる足を踏みしめてみます。

踵から親指、人差し指、と続けていき、最後に小指もそっととつけてみました。

痛くはない! 感じたのは安心感でした。

安心すると、何が起こるか。ゆるみます。

リソースを育てた上でのゆるみ、大事ですよね。

そんな訳で、神経過敏だったモードから通常モードに切り替わってきつつありました。

外ではまだ気が張っていましたが、家の中では緩み始めていました。

 

 

トラウマの再演

 

大分ラクに動けるようになってきたころです。

玄関にあった古紙回収の束に小指をぶつけてしまいました。

あの日のようにうずくまりました。ジンジンと痛む小指さん。

油断してはいけないと警告された気がしました。

再度、慎重になった日々。テーピングも復活させました。

トラウマって繰り返すのだ、と思いながら小指さんに謝りました。

とは言え、この程度だったら耐えられます。でも大地震の後で余震がくる、

パワハラを経験した後で、街で似たような罵声を浴びせられる

そんなことがあったら、ゆるめたら危険!

やっぱり固まっておこう、となりますよね。私の小指に話を戻しますね。

再トラウマから1週間ほどして、スニーカーを履いてみました。

 

 

うん、大丈夫。少し走ってみました。

何となくにぶい痛みがある。でも、そこまで痛くない。

おぉ、耐えられるくらいの痛みになった! 再度安心を感じます。

もう少しゆるんでもOKと、小指さんが言っています。

そうなると、探求心がでてきます。

骨折前にやっていた足裏マッサージ、やったらどうだろう?

グリグリ棒で足裏をそっと押してみます。

うん、大丈夫。もう少し強めにグリグリ。大丈夫。

前と同じくらいの圧で、強めにグリグリ。大丈夫!

はー、やっぱり足裏を感じるって気持ちがいいなー、と浸ります。

 

 

小指のグラウンディング

 

じゃ、小指にも力を入れて大地を踏みしめてみたら?

なんと、小指が地につかない!

知らず知らずのうちに、小指を少し上げているクセがついたようです。

身体は順応して形を変えるのですね。

立つ時、歩く特に重心がずれている気がします。

無意識に小指をかばっていたからですね。

ここから、少しずつ小指さんを大地におろしていこう、

そしてセンタリングをもう一度やっていこうと思っています。

今回のことが教えてくれた骨折してからの心と身体のプロセス

痛み→ゆるみ→再度痛み→ゆるみ→探求→心地よさ

やっぱりトラウマセラピーみたいです。

私がソマティックセラピーをしているから、余計その流れになったのかもしれません。

自分に丁寧に向き合えたこと、よかったです。

心なしか、回復も早かったような気がします。

自分で自分の回復を手伝えるって、とっても心強いなと思いました。

あなたは痛みとどうお付き合いしていますか?