臨床の現場でよくあるパニック症状。
パニック症状に悩んでいる相談者さんは、とんでもなく辛い想いをされています。
電車に乗ろうと思ったら⋯⋯学校に近づいてくると⋯⋯
心臓がバクバクしてきて、死ぬ〜! と感じるのです。
そのような相談者さんにどのように対応されていますか?
傾聴や共感だけでは、なんともらないですよね。
私も昔、「パニック発作で辛いです!」そう相談されて、
「それは辛いですね〜」って言って、話が終わってもうた〜!(笑)
そんな経験もありました。
今回記事を書いてくれた水澤さん。医療系で臨床をされている人です。
沢山のパニックに悩む人に出会って、見えてきたのです。
パニックはなんの理由もなく起こらない。
パニックはプロセスで理解していく、ということです。
どんなプロセスでパニックなるのか?
パニックにしっかり対応するには、まずそこを理解しましょう。
パニックの対応法についても書いてくださっています。
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メンタル疾患のパニック障害。
最近、アイドルなど芸能界でも公表する方たちが増えてきたように思います。
メンタルのお仕事をなさっている方なら、
誰でもパニックの症状を持ったクライエントに会うと思います。
パニックへの対応、むずかしいですよね。
私は以前のカウンセリングでは傾聴で終わっていました。
なんて勿体ないことをしていたのだと思います。
あなたはパニックを持ったクライエントにどんなセラピーをしていますか。
今日は私がお会いしてきたクライエントから教えてもらった大事なことをお伝えしますね。
コンテンツ
パニックとトラウマの関係について
傾聴するだけでは解決しません。
でもどうしたらいいのか分からない。
パニックへの対応ができないことへの無力感、支援者としてツライものです。
急に感じる激しい鼓動、窒息感、ふるえ、手汗、
こんな強烈なパニックの人に対して、対人支援者として目の前で何もできないとしたら...
それは支援者としての傷になりそうです。
あるいは、焦ってしまい「深呼吸してみましょう」という
見当違いの対応をしてしまうかもしれません。
当事者にしたら、訳もなくこんな状態になったらトラウマ体験になりますよね。
実際、パニック発作の感覚は心筋梗塞の時と同じと言われています。
パニック症状を経験した人たちが言う、「死んでしまうと思った」という感覚は正しいのです。
強烈な体験になります。
1回でもこれを経験すると、また同じようなことがおきたらと思いさらに不安になります。
これが俗に言う予期不安ですね。
電車に乗ることが恐怖になることもあるし、
人前で話すことに強い不安を覚えることもある。
それがこわくて学校や会社に行かれなくなるクライエントたちは少なくありません。
そんな苦しみを持つ方たちに何ができるか。
先ずはトラウマという視点をもつことです。
そうすると、対応法が変わってくるのです。
パニックとトラウマエネルギー
パニック発作というと、ある日突然やってくるというイメージが世間ではあるように思います。
でも急にパニックになるのではないのです。
これまでお会いしてきた方たちのお話を伺っていると、そこにはプロセスがあります。
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不快なできごと、ツライ経験、日々のストレス、それらに我慢強く耐えることってありますよね。
耐えるばっかりで、解消できないと心と体にとても負担です。
溜まっていくと、ある瞬間に爆発してパニックとなるのです。
パニックが出るまでのプロセスを理解していくことは臨床で大事だと思います。
パニックをプロセスで理解するということを教えてくれたのは
お会いしてきたクライエントさんたちです。
今回は3人のクライアントさんをご紹介させていただきます。
突然のパニック発作で仕事を中断したA子さん
(プライバシー保護のため、詳細を少し変えてあります。)
A子さんはエンジニアとして第1線で働いてきました。
限られた時間と人材で結果を出すことを求められていました。
人間関係が難しくなったり、技術的に困難なことがありながら懸命に働いていました。
そしてある時突然、呼吸困難になりました。
本人も職場も動揺し、救急車で運ばれました。
運ばれた病院で精密検査をしましたが、特に理由は見つかりませんでした。
精神的なことが原因ということで、私が担当することになりました。
しばらくは何故自分がこうなったのか、
一体どの位で回復するのか、
職場には何と言えばよいのか、葛藤が続きました。
カウンセリングに来るにも電車に乗らなければなりません。
当然、不安が強くなります。
カウンセリング中盤までは、ご家族が付き添ってきていました。
話を聞いていくと、学生時代はキャンプに行ったりして自然を感じるリソースがありました。
スポーツも楽しんでいました。
身体の感覚ともつながっていたのです。
ところが社会人になると、徐々にそういったリソースを感じる時間がなくなっていきました。
そしてそれを自覚しないまま、猛烈にガンバって働く時間が増えていきました。
少しずつ無理を重ね、 A子さんの感覚は麻痺していったようです。
「緑が多い公園に行ってボーっとしてみたり、
海に行って波の音を聞いたり、潮騒の香りをかいだりしたらどうでしょう。」と提案しました。
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「は? どういうことですか??」
彼女の頭の上の?マークがつくのがみえるようでした。
今なら分かります。
ずっと身体の感覚を無視して生きてきたA子さんです。
いきなりボーっとするとか、自然の音や香りを感じましょう、と言っても理解しづらいですよね。
そのころの私はソマティックのソの字も知りませんでした。
今だったら、もうちょっと違う進め方をするし、的確なワークの提供もできると思いますが、
この時はこれが精いっぱいでした。
今振り返ってみると、社会人になってからのA子さんは
少しずつトラウマエネルギーをためていたように思います。
何度も困難な状況に陥っていたのです。
その度にフリーズし、怒りを抑え、感覚を解離させながら「納期」優先で働いてきたのです。
そしてある時に限界に達したのです。溢れ出て、パニック症状になったのです。
つまり、トラウマという視点からみると、発作は突然起きたのではないのです。
エネルギーがたまって大地震になるように、
トラウマエネルギーがたまってパニックになるのです。
次に紹介するBさんもトラウマエネルギーがキーワードになります。
動悸で出社できなくなったBさん
Bさんは、建設業界で働いていました。
あるとき職場で事故に遭い、そのショックでしばらく休んでいました。
少し落ち着いた頃、職場に復帰することになりました。
いつものように朝準備をして玄関を出ようとしたら、動悸がしたのです。
何とか駅まで行きましたが、電車に乗ることができませんでした。
カウンセリングを進めていくと、
事故の前にも対人関係で何年もストレスを抱えておられたのでした。
事故のこと、対人関係のストレスが「動悸」につながったのだと思いました。
Bさんも、少しずつたまったトラウマエネルギーが何かのきっかけで出た、
という理解がしっくりきました。
たまったトラウマエネルギーがパニック症状に発展することもあれば、他の要因も影響します。
最後にC君を紹介します。
乗車すると吐き気が出たC君
C君は学生。
ある時から、バスや電車に乗るとパニックや吐き気を起こすようになって来院されました。
カウンセリングを進めていくと、C君の学校は、息つく間もないほどのスケジュール。
講義、課題、実習がずっと続くのです。
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C君は毎日毎日、時間に追われる学生生活でした。
こどもの頃も、親は勉強に対して厳しかったのです。
何年も心と体がストレス状態だったため、パニックや吐き気を引き起こしたのでしょう。
Aさん、Bさん、C君を通じて、パニック症状が出てくるプロセスをお伝えしました。
慢性的なストレス、多忙、トラウマ的な出来事などが心や体に影響する。
それが何年も続いて、ある時に爆発してパニックになる。
他にもパニックになる要因はあると思いますが、
パニックになる原因やプロセスをこのように理解することで、
よりよい対応ができるのではないでしょうか。
強烈なパニックへのトラウマセラピーの対応法
Aさん、Bさん、C君のような方たち、臨床では多くいらっしゃいます。
どのクライエントたちも、先ずは症状を止めたい一心です。
それはそうですよね。
生活に支障が出ているのですから。
これをどのように現場で対応していけばよいでしょうか?
初回は大体一緒にワークをやります。
強烈なパニックへの対応法などです。
そして同時に心理教育もやっていきます。
さらに、様々な角度からリソース構築を丁寧にやったりもします。
身体が訴えている症状は、ソマティックに寄り添ってこそ癒しが生まれるのですね。
もちろん、複合的にパーツや身体への対応も大事です。
こんな風に書いてみると、シンプルで簡単なように思えます。
でも、パニックの対応は奥が深いものだと思います。
私はまだまだ試行錯誤しながらカウンセリングをしている段階です。
悩みながらではあるけれど、言語中心にやっていたころとは違います。
目の前のクライエントが教えてくれることと
自分の身体が教えてくれること、についていっている感じです。
あなたはパニックの方たちに、どんな臨床をされていますか?