トラウマから回復するには深呼吸がいい。
なんていうのは幻想です!
危険です!
心理カウンセラーが深く呼吸しましょう、と促すことは細心の注意が必要です。症状が悪化する場合があります。
カウンセリングの現場でも、呼吸をクライアントさんと一緒にずっと探求してきました。
失敗しない為にも、呼吸をリソースとするにはどうすればいいのか? 海外の先生の知恵もお借りしながらお伝えしていきますね。
動画からどうぞ
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記事もご活用くださいね。
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コンテンツ
呼吸(ブリージング)とは
まずは呼吸とはなんなのか? その辺からはじめる必要があるのではないでしょうか。
呼吸に関してたくさんレクチャーを受けたり、何十という呼吸法を実践してきました。
まず、はじめにお伝えしたいのが、呼吸こそが「無意識へのアクセス方法」だということです。
無意識というと、意識できないという意味であまり好きではなので、体の叡智へのアクセスという方がピッタリです。
呼吸を探求することで、様々な可能性が広がるとも言えます。
呼吸は、文字通り吸って吐くことですね。 呼気と吸気と言います。
呼気は「吐く」ということ。心理的な意味は、手放すとか、いらないものを外にやるとか。
吸気は「吸う」ことです。意味は、新しいもの、自分には無いものを取り入れる。
人によっては、吐きにくい、吸いにくい、というように特徴があることが多いです。
手放すのが苦手な場合は、吐くのが苦手なこともあります。逆に、新しいアイデアを取り入れるのに抵抗がある人は、息を吸うことに反応があることもよくあります。
呼吸が浅い理由
現代人は、呼吸が浅いようにも思います。感じないようにするものが蔓延しているからです。
スマホ、ゲーム、パソコン、依存することは、ある意味、感じることの反対でもあります。
働くことが多かったり、ストレスを抱えていたり、感じたくもなくなりますよね。
さらに自然と触れ合うことも、意識的に時間をとらいないと、中々ないですよね。ゆっくりと呼吸を深くして、季節を感じたり、景色を眺めたりとかもあまりない。
さらに、虐待やトラウマ(モラハラ、セクハラなどなど)で呼吸は浅くなります。その部分をお伝えしていきますね。
トラウマと呼吸
私も新人カウンセラーだった頃、ゆっくり呼吸してみましょう、なんてよく言っていました。全然わかっていませんでした。
身体とトラウマで有名はパットオグデンをはじめ、多くの海外のソマティック系のカウンセラーが言っていることは、臨床で「呼吸」を促すワークなどは、細心の注意が必要と言っています。
なぜそんなに注意してやらないとダメだと思いますか?
その理由は、私たち一人一人、育ってきた環境(トラウマも含む)によって、今の呼吸のパターンになっているということです。
例えば、怖い父親が怒鳴っている家庭で育ったのであれば、いつもビクビクするのも自然ですよね。だから、怒鳴られないように、呼吸を浅く速くして、俊敏に行動できるような状態にしておく。
そのような呼吸パターンで対応してきたんです。適応してきたんです。
それを、深呼吸が大事みたいに促したり… ドヤ顔で力説なんかしようものなら、クライアントさんは呆れます(笑)
だからポイントは、まずは今の呼吸パターンに寄り添うということです。そして呼吸のワークなどをやるときは、少しずつやるようにする。
さらに、頑張らなくてもいいことも伝える。マインドフルネスを活用することもある程度進んでくるといいですよね。
ワークをやってみて、そのちょっとした変化に気づいてもらったり、浸ることが大事です。
トラウマと過呼吸
過呼吸という方法で、トラウマ症状が出る場合も当然ありますよね。
パニック発作、パニック障害というようなことです。
この過呼吸というのも呼吸のパターンですよね。意味があって、呼吸を早くしている。
その呼吸を一気に変えようとせず、少しずつパターンを変えていく必要があります。
パニックの対応法は沢山あるので、ここでは過呼吸というのも呼吸のパターンということだけ伝えて次に進んでいきますね。
ポリヴェーガル理論と呼吸の関係
トラウマを経験するとどうなりますか? 簡単にいうと、覚醒して闘うか逃げるですよね。それが出来なかったら、シャットダウン、という反応。
呼吸もそうです。闘う逃げるという反応はどんな呼吸パターンですか?
速いですよね。だってたくさん呼吸すると、酸素を筋肉に送ることで、逃げたり戦ったりできますよね。
シャットダウン、解離、離人感のような状態はどうですか? 呼吸はゆっくりになりますよね。浅くもなるし、一時的に止まることも。
そのような呼吸のパターンで、今生きているわけです。一気に大きく変えようとすると、神経系のバランスが崩れるのです。
簡単にですが、ポリヴェーガル理論でまとめると、以下のようになります。
闘争逃走 浅く速い呼吸
平常心 穏やかな呼吸
シャットダウン 浅く遅い呼吸
例外がもちろんあって、低覚醒のシャットダウンでも深いゆっくりの呼吸という場合もあります。
離人感、シャットダウン傾向があるクライアントの場合
重いトラウマ症状を抱えた人は、ある意味、無意識にも、意識的にも、呼吸のパターンを変えてシャットダウンする能力がある。
呼吸をあえて浅くして、辛いことを感じないというように。
そうやって自分でコントロールできるのです。そんな時に、心理カウンセラーが「ゆっくり呼吸してみましょう、大丈夫ですよ」なんて促してしまうとどうなると思いますか?
背側迷走神経に刺激がいき、よりシャットダウンすることが多いのです。
「あ〜このカウンセラー危険!」みたいになることもあります。
でもクライアントさんは、そんなこと言ってくれません。そして、そんな表情することも少ないです。
だってシャットダウンしてるんだから。感じないし、表現しないし。その時はわからなくても、セッションが終わって家に帰ってから、「あのカウンセラーやばい!」ってなることもある。
繰り返しますが、トラウマ症状が強い場合は、まずは本人の呼吸のパターンに寄り添うのです。
寄り添ってもないのに、理解もしてないのに「深く呼吸をしてみましょう」「呼吸のパターンを変えてみましょう」ってやってませんか?
呼吸を促す時は、細心の注意が必要です。
呼吸をカウンセリングで活用する
セッションの中でクライアントさんの呼吸が自然と変わることがあります。これチャンスですよ!
例えば、「そのことを話していると、呼吸が浅くなってきたようすですね。」
「そのあったかさを感じていると、呼吸が深まりましたね。」
というようなことです。無理に変えようとするより、まずは今の呼吸、常に変化している呼吸に意識を向けるサポートをするのがカウンセラーの仕事です。
姿勢と呼吸(ブリージング)
呼吸をするには、姿勢が深く関係しています。
猫背になれば、自然と浅い呼吸になります。背筋を伸ばせば、いつもの呼吸よりは深くなりますよね。
クライアントさんの呼吸を観察したり、呼吸を促す時は、その時の姿勢も一緒に意識しましょう、ということです。
呼吸がソマティックなリソースとなる
呼吸を浅くして、呼吸を抑えて、サバイバルしてきたんですね、というようなことを伝えるのも大事です。
まずは承認する、認めるということです。悪いものを変えようみたいなのは、逆効果です。
〇〇障害とか言ったりしますが、治さなければいけない、というのはどうかと思います。
だって、全て適応するための対応なのです。
生き延びてくるための知恵だったのです。
クライアントとカウンセラーが一緒に探求するような姿勢が安全だし、深まります。
呼吸することがクライアントのリソースになる。呼吸で自分をコントロールできるようになるというような意味です。
心の健康度が高い人の場合は?
心の健康度が高い人は、大丈夫な場合も多いですが、現代人の多くが息が浅い。
無理に呼吸を深めても、あまり変わりません。
要するに、セッションの時だけです。次の日にもなれば、呼吸は浅くなりますよね。
深いワークをやって、その時に「自然に」呼吸が深くなる、、、
それを体に染み込ませていくというようなことです。
「無理なく自然に」ですね。
体のコリと同じです。無理やりほぐしても、その時は気持ちいいけど、また数日でもとに戻りますよね。
呼吸も同じということです。無理やり深くしても、また日々の生き方や習慣で「いつもの状態」に戻る。
まずカウンセラー自身が呼吸を実践する
クライアントさんにどうこうする前に、心理カウンセラーであるあなたが、呼吸を探求しましょう。
呼吸について学びましょう。呼吸を探求することで、興味深い発見があると思いますよ。
何かわかったら教えてくださいね。
そのようなソマティックな実践をしていくと、クライアントさんに提案する時も自然にやりやすいでしょう。
自分が試してもないのに、深めてもないのに、人に言うのは、矛盾しています(笑)
深い体の叡智へのアクセスが呼吸です。今あなたはどんな姿勢で、どんな呼吸をしていますか?