ソマティック心理、初心者のつまずき

 

あなたはソマティックセラピーで成功していますか?

総合トレーニングに参加した水澤です。

私は以前、言語中心セラピーをしていて行き詰まりを感じていました。

そんな時に身体感覚を扱うセラピーに出会いました。

その後トラウマセラピーを学び始めて今3年目です。

ようやくソマティックをベースにやっていますと言えるようになりました。

ソマティックを勉強中のセラピスト同士で話をすることがあります。

学んだけれど、「なかなか現場で使えない」という話が出ます。

私も今日にいたるまで、つまずいてきました。

あなたどうですか?

私が辿ったプロセスと、解決したのは何だったのかをお伝えしますね。

 

傾聴セラピーで失敗しソマティックを導入するまで

 

昔は傾聴と解釈(精神分析)、共感を中心にセラピーをやっていました。

クライエントとの信頼関係ができると、それなりにセラピーは進みました。

でも、どうしても停滞するクライエントが出てくるようになりました。

それがトラウマを負った方たちでした。

傾聴と共感、解釈ではどうにもならなかったのです。

ある時、性被害のクライエントが来ました。

彼は、能力や気質的にリソースがありました。

途中まではいい感じに進んでいたのです。

ところが、セラピーの後半になってクライエントに変化が起きました。

日中も起きられない日が続いたのです。

 

 

仕事は何とかこなすものの、それ以外はずっと寝たきりでした。

クライエント「先生、僕はなんでずっと寝続けてしまうのでしょうか?」

え、なんでだろう??

当時の私はポリヴェーガル理論を知りませんでした。

だから、必死に考えて答えました。

私「子どもの頃からキツイ経験をしてこられて、

安心して寝続けることができなかったですよね。

でも今、休めるようになったのだと思います。」

クライエント「そうか、寝ている時期ってあってもいいんですね。」

私「いいんですよ。」

私の対応は、全くズレてました!

 

 

今なら、どうして寝続けるのか説明できます。

 

もちろん、寝るのもOKですよね。

その上で、今だったら寝続けることの心理教育をすると思います

そして、寝ていてどうするかにも目を向けると思います。

例えば、こんなことを話し合うと思います。

横になっているときにどんな感じか?

眠りに入っていないときにはどんなリソースがあるか?

などについて話し合うこともできますよね。

そうすれば、クライエントは寝続けることの意味が理解できたでしょう。

彼の中の低覚醒のパーツさんが認められたと思ったら、もっと安心できたと思います。

これだけではありません。

実はこの段階の少し前で、もっと大きな失敗をしていたのです。

 

 

トラウマ暴露で悪化させる

 

実は、彼がトラウマの記録を書き始めたときに何も言わなかったのです。

セラピーで性被害について聞くことはしていませんでした。

それは、彼が語らなかっただけのことです。

語っていたら丁寧に聞いてたと思います。

セラピー後半で、彼が書いた記録を持ってきてくれました。

見せてくれたので、読みました。

その後から彼は寝続けるようになったのです!

低覚醒にいるようになったことと、

彼が詳細を思い出したこと、関係があったと思います。

今だったら止めたのに。

 

 

今だったらもっと心理教育できるのに。

と思っています。

止めなかったこと、知識がなかったこと

そのせいでクライエントを低覚醒に行かせてしまったこと、

今も悔いています。

 

 

ソマティックのやり方を知って盛り上がる

 

その後、身体志向セラピーを知り、初めて身体の感覚に意識を向けました。

リソースを感じている時の感覚、

それを深めて覚えておく、

これ、最高じゃん!

研修では、お互いセラピストなのでやりやすいです。

本も読みました。

「ポリヴェーガル理論入門」は正直、難しく感じました。

でも今まで知らなかった世界が広がり、これならもっとクライエントをラクにできる!

新米ソマティックセラピストの私は鼻息あらくそう思いました。

でも、実践は別だったのです。

 

 

始めに対人支援者が整っていく 

 

つまずきながらも実践は続きました。

子どもに腹が立って、覚醒度がドンドン上がっていく感じ

ホームで電車を待っているときに感じるそよ風の感じ

朝焼けを見てじんわりする感じ

不快を身体感覚からキャッチ

快も身体感覚からキャッチ

マインドフルな時間が増えていきました。

自分の感覚や、情動調整は少しずつできるようになっていきました。

周りにいる人の覚醒度も分かるようになってきました。

だけど!

セラピーに取り入れようと思うと、うまく活用できない。

 

 

なかなか言葉が出てきません。

それでも、ポリヴェーガル理論を説明します。

チャートを見せて、今どこら辺にいるでしょうか、などとやります。

ある程度身体感覚を持っている人にはとっても入りがよかったです。

ところが、普段から身体を感じなくして過ごしているクライエントには

散々な結果になりました。

「うーん、ちょっとよく分かりません。」とか

「これやって何の意味があるんですか?」などと言われていたのです。

多くのクライエントたちは、セラピーは話をしにくるところと

強く信じているのです。

そりゃそうだ。

自分だって少し前まで話をする(だけ)なのは当たり前と思っていたのですから。

でも、ソマティック学び始めた私はセラピーに取り入れたくて

ウズウズしてしまいます。

話をしばらく聞いて、ポリ理論やリソースの話に持って行きます。

そして、リソースを感じてみましょう、とやったら

「先生、なんか嫌な感じがしてきました。」と言われたりするのです。

どうしよう、不快な感覚が出てきた

と焦りながら、ちょっとここで止めましょうと言います。

ソマティックの知識があるのに、現場でなかなかうまくいきません。

 

 

ソマティックの達人たちに聞いてみる

 

困った私は、研修の先々でどのようにソマティックセラピーを

導入しているか聞きました。

達人たちは、私よりずっと前からソマティックセラピーをしています。

そしてセラピーをしているだけではありません。

例えば、本を出版しています。

Youtubeで発信しています。

HP上でたくさん説明しています。

クライエントたちは予約する前に心理教育を受けているのですね。

そして予約を入れた時点で、ソマティックへのモチベーションが高まっているのです。

一方の私は、病院や組織内で「カウンセリングでは話をする」と思って

来室する方たちばかり。

前提が違う!

技量が足りないだけではなかったのですね。

その上で、もう一回達人に質問してみました。

そしたら答えは「タイトレーションね。」でした。

教えてくれたアメリカ人の先生、とっても丁寧に教えてくれました。

タイトレーション、日本語で言うと「滴定」です。

トラウマそのものを一気に扱わないということです。

言い換えれば少しずつ進めていくということです。

分かっていたようで、焦っていた自分に気づきました。

そして、ソマティックセラピーへの熱量を落としました。

今までの言語中心スタイルでもいい、

でも機会があればソマティックを取り入れる、くらいです。

 

 

クライエントが活性化で困っているという話になったとき

 

例えば

不安が高まって電車に乗れない

緊張して人と会えない

強迫症状で仕事が進まない

などの話が出てきた時に、その場で一緒に情動調整をしていきました。

今日は少しソマティック寄りだったなー、という日が徐々に出てきました。

しばらくすると、クライエントから覚醒度についての報告

を受けることが出てきました。

セラピーでやったことを、日常生活でも意識するようになったという報告です。

電車に乗る前にやっているんです。

職場でやるようにしているんです。

歯医者が不安で仕方なかったのに行けるようになったんです。

自分がソマティックを使えるようになるより、ずっと嬉しい報告でした。

 

 

クライエントがラクになっていくこと、セラピスト冥利に尽きますよね。

当たり前だけれど、クライエントはセラピー以外の時間が圧倒的に多いです。

だから、日常が改善されていくことは大きな意味を持ちます。

何年も足踏み状態が続いていたような人も、少しずつ動き始めました。

取り入れるのもタイトレーションなら、変化もタイトレーションです。

少しずつ変化していけば、いつの間にか日常が変わっている。

もちろん、大きなトラウマを抱えている場合は

土台を整えてから対処する日がきますよね。

でも、今の私はクライエントに対して

少しずつソマティックを取り入れることができているだけでOKです。

 

 

トラウマセラピーの進め方

 

ソマティックセラピー、最近は学ぶ場所が増えてきましたよね。

色々なテクニックがあると思います。

でも基本は一つしかないと思っています。

これは総合トレーニングでずっとやってきたことです。

一番大事なのは土台作り。

セラピストの土台の基礎は「在りよう」です。

テクニック的にはリソース構築がまず重要ですよね。

でも、在りようはもっと大事です。

リソースが家の骨組みだとしたら、在りようは地中の成分というイメージ。

もし地面が液状化したら困ります。

先ずは地中に底力を持たせる。

その上で、しっかりとした骨組みを作る。

その上でトラウマにアクセスすると、安全に解放できる。

だから一気にやりません。

液状化する地面の上に家は立たないですものね。

セラピストの在りよう(地中成分)を健康にし、

しっかりとリソースを感じる力を身につける。

次にクライエントに対して少しずつソマティックを取り入れていく。

そうすると、セラピーも進んでいくように思います。

私もまだまだ山の麓にいますが、少しずつ登っていくつもりです。

あなたはどんな道を辿っていますか?