トラウマ的な体験の記憶は強烈です。私たちにフラッシュバックとして激しく襲ってきます。
トラウマ記憶を安全に書き換える7つの原理原則とは?
ソマティックなセラピーをするには、トラウマ記憶の対応が必須です。海外の先生の知恵もご紹介しますね。
まずは動画からどうぞ
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コンテンツ
記憶を理解するのに大事なポイントは?
トラウマ記憶を理解するには、まず記憶とは何なのかをお伝えします。
カナダの大学で、「記憶」の授業を思い出します。何ヶ月も記憶のことを学ぶのです。
図鑑くらい分厚くて、800ページくらいある記憶の教科書を何度も何度も読んで理解しました。そう「記憶」しています。
その記憶の授業で20年以上たった今でも記憶していることは….
記憶の授業の記憶…. ややこしい(笑) 覚えていることは2つです。
記憶の授業
1つ目は、記憶と事実は違うということ。記憶はビデオテープのように全て記録されているわけではない。
ビデオテープって、例えが古い。もう20数年以上前のことなので(笑)
要するに、記憶は主観的で個人の解釈が入るので変わるということです。
もう一つは、記憶はReconstractive。コンストラクティブは構築という意味です。REなので、再構築。私たちは記憶を再構築しているのです。常に少しずつ書き換えているのです。
記憶は書き換えれるとも言えますよね。トラウマ記憶だってそうです。
こうやって書き出してくると色々思い出してきました。ロフタス博士の虚偽の記憶、学習と記憶、記憶の保持とか、、、
でも一番覚えているのは、何だと思いますか?
図鑑みたいな教科書を眠くなる目をこすって頑張って覚えるくらい読んだことです(笑)
そしてレポートを書くために何十という論文や本を読んだことです。
そんな授業がいくつもあるのです。お〜芋ずる式に、苦労の苦学生だった出来事が出てくるではないですか〜(笑)
トラウマ記憶を書き換える前に、よくある間違いをお伝えします。
(間違い)トラウマ体験の記憶を呼び起こす
トラウマ記憶は分断されていることが多いです。シャットダウンして、解離してぼんやりとしか覚えていないことも多いです。
心理カウンセラーは、そんなトラウマ記憶を全てきっちり出来事として呼び起こすことを目的としないことです。
全てのトラウマ記憶を書き換えたり、解消する必要はないということです。
体には、全てボディーメモリーとして記憶されています。
(間違い)心理カウンセラーは、トラウマ体験をただ聞かない
心理カウンセラーは、トラウマ記憶をそのまま、クライアント中心療法とか言って、話させないということです。
傾聴を静かにするものではないのです。
話しっぱなし、聞きっぱなしをするのではないのです。そうすると再体験して、症状が悪化します。
辛い記憶を書き換えるためにするのです。再構築するためなのです。
その部分をこれからしっかり伝えていきますね。
辛いトラウマ体験の記憶を書き換える原理原則
トラウマ記憶を書き換えるのは、回復の比較的後半でやることです。
もう一つ大事なことは、書き換えるというのは、全く別の新しい記憶を埋め込むとか、そういうことではないです。
トラウマの出来事は今となっては変えれません。でも、捉えかたを変えたり、強烈に張り付いている嫌な感覚を変える、解放するという意味です。
例えば、本をイメージしてみてください。この本はあなたの自伝です。生まれた頃から今までの出来事が書かれています。
その自伝に私たちは「特定の部分」にアンダーラインを引くのです。引かれたところだけ記憶として覚えている。
強烈に強い感情が出てくることにアンダーラインを引いているのです。
でも、そのアンダーラインを引いた強い感情的な出来事の周りにも実は色々なことが起こっていたのです。色々なことを感じていたのです。
アンダーラインを引いてない部分に意識を向けてあげるのが心理カウンセラーの仕事です。
さあ、トラウマ記憶を書き換える7つの原理原則お伝えしていきます。
1 リソースがポイント
線を引いてない所を探っていくと、リソース的なことが多く見つかります。
辛かった出来事を乗り越えるのに、あの人もあの人もサポートしてくれたとか。感じなくすることで、自分を守ってきたとか。
どのようにそんな大変な中、サバイバルしてきたのでしょうか? などと聞くのがいいですよね。
アンダーラインを引いた所だけを「ただ聞く」のではなく、その周辺のリソースの部分をしっかり聞くということです。
2 外と内のリソースを聞き出す
リソースには内側と外側がありますよね。その視点を持って聞いてみてくださいね。
内側のリソースは解離して感じなくした、呼吸を浅くして加害者を取り込まないようにした、セルフケアをしたなど。
外側のリソースは、サポートしてくれた人、求めてくれた人、ペット、環境にあるものなどです。
3 キーワードは前、最中、後
センソリーモターサイコセラピーで有名なパットオグデン先生が強調されていることあります。
こことっても大事な部分になります。
トラウマ的な出来事の前、その最中、その後、この3つのポイントで、トラウマではない部分に目を向けてもらう。リソースを探すとも言えます。
例えば、何人かに言葉でいじめられた出来事があったとします。それが起こる数分前は何をしていたのか?1時間前は?
いじめられていた最中にリソースがあったか? なんとか抵抗した自分がいたりしますよね。逃げようとした自分がいますよね。
いじめられた直後は? 次の日は? 数ヶ月後は? どのようにその嫌な出来事を対処しようとしたのか?
しっかり振り返れば、助けを求めていたり、対処しようと色々試していたりされています。そのことをクライアントさんに気づいてもらうのが大事なのです。
自伝のアンダーラインの部分だけ覚えていたのが、その他のリソースの部分にもアンダーラインを引くことです。
そのことこそがトラウマ記憶を書き換えていくのです。
4 小さめのトラウマ記憶からやる
大きめのトラウマ、即ち強烈な感覚や感情がくっついてる出来事は後に回すことが多いです。例外はありますが。
小さめのトラウマから書き換えていくことで、成功体験にもなります。強い感覚や感情に耐えたれるような力もついてきます。リソースもどんどん増えていきます。
5 出来事にくっついてるイメージ、感覚、感情、意味、音
トラウマ記憶は、何が起こったという出来事がありますよね。その出来事に、イメージ、感覚、意味、行動、音、味覚など、様々なものがくっついています。
そのくっつき過ぎているものを分離するとも言えます。
例をあげますね。最近、カレー食べました? うどんでもいいしラーメンでもいいです。ここ数日で食べたものを思い出してみてください。
特に何の感情も湧いてこないですよね。ただ食べたという出来事だけですよね。まあどんでもなく美味しいカレーだったのなら、強烈に感覚が伴うかもですが(笑)
トラウマ記憶は、そのようなただの出来事ではない。感情などがチャージされている。そこを解放して、ただの出来事に近づければいいのです。
6 トラウマ記憶を安全に書き換えるにはソマティックなアプローチ
トラウマ体験をただ話すと、再体験してしまいます。
出来事を思い出して、嫌な身体の感覚が出てきて、怖いという感情が出てきて、やっぱり私は不幸という思考まで出てくるのです。
そうすると、心と体が耐えられなくなります。解放もされないし、記憶を書き換えることもできません。
ポリヴェーガル理論でいうところの耐性領域を超えてしまい、プロセスできない圧倒された状態です。
じゃあどうすればいいのか?
1つは、さっきお伝えしたリソースを掘り起こしてから、トラウマ体験からくる「感覚だけ」に寄り添うのです。
そうすることで、圧倒されないのです。感情とか出来事とか無視して、感覚だけに留まるのです。
この感覚にだけ留まるという部分は、本の一章くらいになりそうですが、大事なので簡単にでもお伝えしました。
繰り返しますが、ある程度回復が進んだ状態のクライアントさんとしてくださいね。
7 ゆっくりやる
あなたが想像する以上にゆっくり進めていく必要があると思います。亀さんくらいゆっくりです(笑)
リソース構築をしっかりして、回復の後半にトラウマの記憶を扱いますが、そのプロセスもゆっくりがいいです。
そして、トラウマ記憶の部分をやりながら、いつもリソースに意識を向けていく、安全にゆっくりやっていく必要があります。
シャットダウンしているクライアント
解離、離人症、シャットダウン、重度のうつ、この辺の方は、トラウマ記憶にアクセスするのは論外です。
もっとシャットダウンしてしまいます。もっと感情を感じなくしてしまいます。
もう限界で食べれないと言ってるのに、もっと食べろ! みたいなことです(笑)
記憶について考える
記憶はとても柔軟なものだと思います。強烈な感情を持ったトラウマ記憶もあれば、安らぎを与えてくれる記憶もある。少しずつ書き換えることも可能。
記憶を例えるなら、音楽みたいなものでしょうか。
曲によっては激しく感情を揺さぶられるし、穏やかに癒しを与えてくれる。その音楽は、プロの編集者がちゃんとした機械を使えば、自由に編集できますよね。
ただ、今までずっとその歌を歌ってきたので、曲を大幅に変えること不自然かもしれません。負担もかかると思います。
ヘビメタ系から、急にクラシック系に移行するのは無理があります(笑)
でも少しずつチューニングしたり、リズムを少しずつ変えることで、よりよい曲に調整していきたいものです。