世代間トラウマという視点を心理セラピーで応用

 

「世代間トラウマ」って聞いたことありますか?

トラウマ、虐待、生きづらさなど、様々なものが1つの世代から次の世代へ伝わっていきます。

カナダバンクーバで先住民にカウンセリングをした経験で、それを痛感させられました。

そして、世代間トラウマを解消するための大事な7つの視点とは?

動画がオススメです。

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記事でも、より詳しく説明しています。

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世代間トラウマという視点を大事にする理由

 

愛着やソマティックの世界的権威、ダイアン先生のオンラインセミナーを学んでいた時のこと、、、

先生が何ヶ月も丁寧に、「世代間トラウマ」について講義されるんです。

で、、、私は思ったんです。この際あらためて学ぼう。

そして、なぜここにきて「世代間トラウマ」なのか? そんな背景に興味が出てきました。

余談ですが、意外に隠れている背景とか見えにくい構造、そこに重要なポイントがあるのです。

 

まず心理臨床で意識してほしいこと

 

私たち支援者は、目の前のクライアントと向き合う。その人の世界観、生きづらさ、希望や夢までも。

そして、クライアントの家族という視点も大事に関わっていく。特にどんな親だったのか? 育ってきた環境は? そこって大きい。

でも、もっと長いスパンの視点を持つ必要がある。そうダイアン先生から学んでいて思わされました。

要するに、クライアントの親、その親のじいちゃん、ばあちゃん、その上の世代のとうちゃん、かあちゃん。その上の、そのまた上の、、、、という視点も大事なのだと。

 

 

世代から世代、遺伝的なものも伝わるし、思考、行動パターン、価値観、トラウマとかも、思った以上に、伝わってくるのです。

クライアントとその親。みたいな狭い視点ではなく、まずは、クライアントの親とその親、5世代というもっと広い視点を持つこと。

最初のスッテプとして、まずはそう普段の臨床でクライアントさんを意識してみてはどうでしょうか?

この記事の後半で、さらなるステップをお伝えしますね。

まずは世代間トラウマの悲惨さを体験した話をさせてください。

 

 

カナダ時代の先住民族との心理カウンセリング

 

カナダ、バンクーバーで臨床をしていた頃、、、あるクライアントとの初回セッション。

あれっ? なんか日本人ぽいッ!?よく聞いてみると、カナダに住む先住民族の方でした。

いわゆる「インディアン」余談ですが、この呼び方が差別的ということから、カナダの先住民族のことは「ファースト ネーション」といいます。

アメリカは「ネイティブ アメリカン」 オーストラリアは「アボリジニー」ですよね。

 

私の目の前に座った先住民の青年、、、

私の勤めていたのが、過去に性被害を受けた男性の相談センター。その部分のトラウマ症状があるのだと予測をしていたのです。

そうするとですよ。話をしていくととんでもないことが、わかってくるではないですか!!!

その青年だけでなく、何人もの先住民たちとカウンセリングをしました。彼らの悲痛な叫びをお聞きしました。

 

 

先住民は、全てを失ってきたのです。言葉を奪われ、住む場所を指定され、教育を変えられ、文化や風習を変えられてきた。

私のカウンセリング室で、目の前に座っている青年、、、その親、そのまた親たち、、、何世代にもわたって搾取され続けたのです。

そのしわ寄せが若い世代にも、計り知れないくらいにきていたのです。

 

世代間トラウマ。究極の世代間トラウマです。

カナダの大学でちょっとは授業で学んだことはあった。でも、青年の生の声。震える想いで、聞いていました。

文化を奪われ、、、仕事もない、お酒を浴びるように飲み、こどもたちを虐待する。そんな虐待の連鎖。世代間トラウマ。

その青年、、、トラウマ症状を減らす、トラウマケアをする、その部分はよくなるけど、、、

奪われたものに対する、憤り。悲しみ。無力感。カウンセリング? 何とかメソッド? 〇〇アプローチ?

そんなもの、全く立たない! そんな話です。

 

 

世代間トラウマに関連する7つの臨床的な視点

 

世代間トラウマを解消するために、3つのことをすればいいとか、そんなシンプルなことではないですよね。

総合的にやる必要があります。トラウマセラピーという心理の支援現場で、持っていてほしい7つの視点をお伝えしますね。

 

 

1 神経系は伝染する

よくソマティックなアプローチをやっていると、、、

神経系に働きかける、神経系を調整する、なんて聞くけど、ピンとこない人もおられますよね。

シンプルにお伝えすると、覚醒レベルということです。

テンション高かったり、低かったり。過覚醒になったり、シャットダウンしたり、そこに働きかけるのがトラウマセラピーですよね。

親たちの不安が強かったら、、、その不安をこどもも感じますよね。これって毎日のことです。

こどももその神経系に影響されるということ。そのような視点を支援者に持っていてほしいのです。

不安で、過覚醒になっていると、呼吸が変わるし、行動も早いし、話し方も、せかせかしてたり。そんなのが世代間にわたって伝わってくる。

さらに大事なのが、、、カウンセラーの神経系もクライアントに伝染するのです!

プラスにもマイナスにも(笑)

支援者が穏やかな神経系でただ存在する、、、それだけでいい感じになります。

自分が過覚醒になっていることに気づいてない支援者もいる。トラウマ的なことを抑圧してる場合が多いのですが、そりゃ、気づきにくいです。

それで何千人とかにセッションをやってしまう。よろしくない神経系を伝染させている。悲劇です(笑)

 

2 価値観が伝わる

この要因は理解しやすいですよね。親が持つ何らかの価値観が伝わることもありますよね。

「人は裏切るものだ」「世界は怖い場所だ」というような価値観とかありますよね。

もちろん反面教師にすることもできますよね。

意識的に反面教師でできることもあります。でも、無意識的に影響を受けることもよくあるので、反面教師にするのが難しいのです。

 

3 家族に押し付けられた役割

加害者、傍観者、救済者など、様々な役割を押しつけられます。

こどもが親の愚痴を聞くカウンセラーのような役割を押し付けられたり。そんなしわ寄せがくるのです。生きづらさが伝わるのです。

家族やグループになると、不思議なくらいそれぞれが役割を担っていく。

力のないこどもは、自由に役割を選ばせてもらえない。押し付けられた役割を何とかこなさないと生きていけないのです。

 

4 親とのバウンダリー

親との距離感(バウンダリー)も世代間で伝わっていきます。

近すぎる距離感遠すぎる距離感もありますよね。そんな自分の親としっかり距離を取れるようになるのは、簡単ではない。

しがらみもあるし、物理的な距離感もあるし、金銭的、精神的な微妙な繋がりもあるし。

 

5 愛着

そんな親とのバウンダリーとも深く関わっているのが、愛着のパターンです。

簡略化して説明します。親と近すぎると不安型の愛着パターンだし、遠すぎると回避型の愛着パターン。

両方ぐちゃぐちゃだとD型というように。

親がどんなことも無関心で回避型だと、こどももそのようなパターンにもなります。

神経系とも関係してそうですよね。だから、愛着というのは、様々な大事な要素が絡んでいると言えますね。

 

6 レガシーバーデン

突然ですが、内的家族システム療法(IFS)ありますよね。パーツ心理学の1つのです。

その中に「バードン」という概念があるのです。とっても、大事なキーワードです。

直訳すると、負担、苦しみ、重荷ということ。

バードンも色々あるのですが、家族、社会、伝統、文化などから背負わされるものを「レガシーバードン」と言います。

レガシー(Legacy)遺産みたいな意味です。先祖や過去からの遺産ということ。そんなとこからの重荷を背負わされるのです。

「どんな時も、人のことを先に考えなさい」「日本人は、〇〇であるべき」「女性は、〇〇であるべき」そのようなことです。

もっと強烈なのもありますよね。

世代間トラウマで大事なのが、、、目の前にいるクライアントが、どのようなバードン(重荷)を背負っているのか? そこに意識を向ける。

そして、そこを解放する方法がパーツ心理学にはあるのです。

 

7 支援することは世代間トラウマを断ち切ること

以上の6つのことを意識して日常の臨床に臨んでみよう、ということです。

神経系をモニターして、価値観、役割、親との距離やバウンダリーを意識する。愛着や文化的なドロドロしたものまでも。

言い方は何でもいいんですが、心理カウンセリング、臨床、セラピーという支援ありますよね。

それを本質的にすることは、何世代にもわたって伝わってきた負のものを断ち切っていくことなのです。