今回は、 船長とポムの話です。
支援者は、何を見ているのか。何を感じているのか。
トラウマセラピーの本質、大事なこと、見落としやすい点、書いていきます。
コンテンツ
支援者は何を見ているのか? ポリヴェーガル理論的セラピー
ある日。ポムが突然、海へ行こうと言い出した(笑)
かなり本気らしい。
結局、船を借りることに。
何人かの乗組員も 集まってくれた。
そして出航の日。
乗組員たちは 楽しそうだった。
「あの島に行きたい」「あっちの港も面白そうだ」
みんな、 目的地の話をしてる。
ポムも嬉しそうに 船の上を走り回っている。
やっほ〜い!!! 船が出るよ〜!!!
そんな中。船長だけは少し違った。
船長は海を見ていた。
波を見ていた。風を見ていた。流れを見ていた。
でも、見ているというより、感じている。
しばらく海を眺めていると、ふと立ち止まった。
「あれ? 何かが違う」うまく説明できない。
でも、波が少し変わった気がする。
乗組員たちは気づいていない。
ポムも走り回っている。
でも船長だけは、何となく気になった。
実は、セラピーも少し似ている。
昔の私は、話を聞いていた。
何があったのか。なぜそうなったのか。何を感じたのか。
そんなことを一生懸命、聞いてた。
もちろん今も聞いている。でも、少し違う。
私が耳を澄ませているのは、話だけではない。
ほんの少し息が入る瞬間。
ほんの少し肩の力が抜ける瞬間。
過覚醒が少し緩む瞬間。
自分の中にエネルギーが沸いた瞬間。
そんな小さな変化。
今この瞬間に、起こってる変化です。
大きな変化は誰でも分かる。
でも、実際のセッションで大切なのは、ほんの少し、何かが変わる瞬間。
そこを、しっかり感じ取る。
そういう小さな変化を積み上げていくのです。
たぶん、船長が波を感じるのと少し似ている。
その日の夕方。海は静かだった。
乗組員たちは楽しそうに話している。
ポムは疲れたのか、甲板に寝転がってる(笑)
船長は今日も海を見ていた。
波の向こうではなく、波そのものに耳を澄ませながら。
次は、船の中にいる乗組員たちの話。
どうやら、クセの強い人もいるみたい(笑)
パーツ心理学の奥義(船と乗組員たち)
航海が始まって、しばらく経った。
海は穏やかだった。
乗組員たちも少しずつ打ち解けている。
ポムは相変わらずだ。
誰かがおやつを持っていると、なぜか必ず現れる。
その能力だけは、ズバ抜けてる(笑)
そんなある日。船長はふと思った。
同じ船に乗っている乗組員たちのことを、どれくらい知っているのだろう?
名前は知っている。顔も知っている。
でも、本当のところは、まだよく分からない。
ある人は明るい。ある人は無口。ある人は慎重。
それくらいしか知らない。
ところが、風が強く、波が荒れた日があった。
普段は穏やかな人が、急にみんなへ指示をし始める。
いつも元気な人が、黙り込んでしまう。
そんな困難に直面して、乗組員たちのことをより知れたのでした。
わかってるようで、わかってなかった。
そんな気づきがあった。
そして数日後。
ポムが船の奥へ向かっていった。
ついていくと、ボイラー室だった。
ポムは扉の前で、しっぽを振っている。
しばらくすると、中から一人の知らない乗組員が出てきた!
船長は驚いた!
「え?」「いつからいたの?」
話を聞くと、ずっと前から乗っていたらしい。
ただ、しゃべるのが苦手で、ずっと奥で働いてたらしい。
船を動かすために、毎日頑張ってくれていた。
船長は申し訳なくなった。
毎日同じ船にいたのに、その人のことを知らなかった。
奥にいるパーツに出会うこと
実は、心理セラピーも似てる。
色々なパーツがいるのです。
怒っている部分。頑張っている部分。怖がっている部分。
わかっているようで、わかっていない。
そして、いつも前に出て、セッションを受けてるパーツも。
奥にいるパーツも。
そして、セラピストにも誰にも気づかれないまま、ずっと頑張ってるパーツもいる。
より効果的な支援とは、全てのパーツたちに意識を向けていくこと。
無理やりではなく。優しく関心を向けていくこと。
乗組員をより深く理解すること。
知らなかった乗組員に出会うこと。
少しずつ無理をせず。
その日の夕方。
乗組員たちは甲板で食事をしていた。
いつもボイラー室にいる乗組員も、今日は一緒にいる。
少し緊張しているけれど、どこか嬉しそうだった。
ポムはその隣に座り、何かもらえないか期待している〜(笑)
見立ての本質(船長と海図)
神経系という波を見る。パーツという乗組員を知る。そんな話でしたね。
今日も海は穏やかだった。
風も悪くない。乗組員たちも元気。船も順調に進んでいる。
誰が見ても、良い航海だった。
船長もそう思った。「順調だな」と。
でも何かが気になった。
理由は分からない。問題があるわけでもない。説明もできない。
でも、何かが少し違う。そんな感覚だった。
船長は海図を広げた。
風向きを確認する。海流を確認する。島の位置を確認する。
夜になると、星の位置も確認した。
すると本当に少しだけ航路がずれていた。
まあ大丈夫だけど、一週間後はどうか? 一ヶ月後はどうか?
気づけば、全く別の場所にいるかもしれない。
船長は静かに舵を修正した。
乗組員たちは驚いていた。「順調だったのに?」
確かに順調だった。
だからこそ、気づきにくかったのだ。
心理セラピーの見立ては、微細なことの確認なのです
実は、セラピーも少し似ている。
順調そうでも、確認することがある。
順調なのに、なぜか気になる。
本当にこの方向でいいのだろうか。そんなことを考える。
考える、というより感じる。
大きな失敗は気づきやすい。でも、小さなズレは気づきにくい。
しかも、みんな良かれと思ってやっている。だから難しい。
違和感を大切にすること。
「あれ?」を無視しないこと。
立ち止まること。確認すること。
それが見立てなのかもしれない。
その日の夜。
船長は海図を閉じた。
どうやら大きな問題にはならなかった。
少し修正しただけで済んだ。
ポムはというと、海図の上で気持ちよさそうに寝ている。
どうやら海図は、寝床だと思っているらしい(笑)
船長は苦笑いしながらポムを抱き上げた。
海では、少しのズレが大きな違いになる。
たぶん、人の心も同じなのかも。
支援者の臨床における最大の盲点とは?(船長の見落とし)
神経系という波を見る。
パーツという乗組員を知る。
全体像という海図を確認する。
そんな話でしたね。
航海が始まって、しばらく経った。
船長は毎日、海を見ていた。
海図も確認しながら、乗組員たちの様子も気にしていた。
順調な航海だった。
そんなある日、遠くに黒い雲が⋯⋯
風も少し強くなってきて、海もどこか落ち着かない。
乗組員たちも、少し緊張している。
念のため進路を再確認。
問題はなさそう。
でも、何となく落ち着かない。
気づけば、「あれは確認した?」「こっちは大丈夫?」そんな指示を多く出していた。
乗組員たちも、どこかピリピリしている。
その時、ポムが近づいてきた。
そして船長の足に身体を押しつけてくる。
船長は、ポム〜って言いながらヨシヨシした。
また来て体を押し付けてくる。
船長はポムを抱っこした。
ポムの顔を見る。
じーっと、こっち見てる。
何か言いたそうだ。
船長は思わず笑った。
そして、ふと気づいた。
船長が気づくこと(セラピー犬の活躍)
海のことに意識が向いてた。
乗組員たちのことも考えていた。
でも、自分のことは、全く見ていなかった。
自分が焦ってたり、力が入ってることに気づいてなかった。
どうやら、落ち着かないのは海だけではなかった(笑)
実はセラピーも、そんな感じ。
クライアントの神経系を観察する。
パーツたちにも関心を向けている。
そして、回復のどの段階にいる?という全体像を確認してる。
でも、それだけでは足りない。
自分自身の観察!(笑)
早く楽になってほしくて、つい焦っちゃう。
なぜか気になる人もいる。
なぜか苦手なテーマもある。
そんな時、見ているようで、一番見えていないのは、自分自身かもしれない⋯⋯
その日の夕方。
黒い雲は通り過ぎていた。
海も少し落ち着いている。
乗組員たちは楽しそうに夕食の準備をしていた。
ポムは満足そうに、船長の足元で丸くなっている。
船長は、深く息を吐いた。
ふっ〜
いつもより海が美しく感じる。
最後に、この長い旅で、船長が最後に学んだことは?
回復プロセスの本質(船長の最後の学び)
航海は続いていた。
晴れの日もあった。
風の強い日もあった。
波が穏やかな日もあれば、なかなか前に進まない日もあった。
船長は、そんな毎日を過ごしていた。
ある日の夕方。
甲板に立ちながら、海を眺めていた。
ポムは足元で寝ている。
乗組員たちは、それぞれの仕事をしている。
誰かは見張り台にいる。
誰かは帆を整えている。
誰かは夕食の準備をしている。
その様子を見ながら、船長は少し目を細めた。
最初の頃は、もっと頑張らなきゃと思っていた。
もっと良い船長にならなきゃ。
もっと早く進まなきゃ。
そんなことばかり考えていた。
でも、長く海にいると、分かってくることがある。
どれだけ頑張っても、風は変えられない。
波も変えられない。
海流も変えられない。
こちらの都合で、海は動いてくれない。
追い風の日もある。
向かい風の日もある。
思った以上に進む日もある。
ほとんど進まない日もある。
それでも、やることは変わらない。
風を見る。波を感じる。乗組員たちと話す。
今どこにいるのか確認する。
そして、その日にできることをやる。
ただそれだけ。
心理セラピーの真髄|コントロールを手放す
実はセラピーも、少し似ている。
神経系を観察する。
パーツたちに耳を傾ける。
今どこにいるのか確認する。
自分自身の状態も見ていく。
でも、それを全部やったとしても、思うように進まない日もある。
少し良くなったと思ったら、また元に戻った気がする時もある。
何ヶ月も、変わらないように見える時もある。
そんな時、昔の船長は焦っていた。
でも今は少し違う。
海を信頼している。
目の前では、何も起きていないように見えても、
海の中では、流れが動いていることを知っているからだ。
人も同じなのかもしれない。
変化は、いつも分かりやすい形で起きるわけじゃない。
少し息が深くなった。少し力が抜けた。少し安心できた。
そんな小さな変化が、積み重なっていく。
気がつけば、ずいぶん遠くまで来ている。
その日の夕暮れ。
空はゆっくり赤く染まっていた。
船は静かに進んでいる。
ポムも起きてきた。
そして、船長の隣に座った。
船長は海を見る。
どこまでも続く海だった。
相変わらず、先のことはよく分からない。
でも、不思議と不安はなかった。
船長は、ポムの頭を撫でた。
ポムは気持ちよさそうに目を細める。
船長は、そっと微笑んだ。
やっぱり、この旅が好きだ。
そして船は、今日もゆっくり前へ進んでいた。
おしまい。









