身体志向(ソマティック)のセッションでは、身体の様々な部分にアプローチします。
その1つが身体の「動き」です。
現場のカウンセリングでは、様々な「動き」が出てきます。
心理カウンセラーは、まず「動き」を認識できる必要があります。
そしてどのように介入するのか?がポイントになってきます。
トラウマセラピーにおける、よくある7つの動きとは?
まずは動画からどうぞ。
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コンテンツ
カウンセリングで体に起こるムーブメント(動き)とは
そもそも動くとはどういうことなのか?
「動」を理解するには、その逆は何だろう? と考えてみる。
反対を知れば、そのもの自体が理解できる。
動の逆は、静。動いてない状態。安定した状態とも言えるかもしれません。
静というのは、動くことが出来ないとも言える。
ふと思うのですが、止まっている以外は、全て動いている、となりますよね。
生物的には、細胞レベルでは常に何かが動いている。
私たちの心臓は、生まれてから死ぬまで、常に動いている。
生きることは、動いていること、とも言えそうですね。
あまり深掘りすると、迷宮入りしそうなので、この辺で辞めときます。静かに止まります。(笑)
トラウマセラピーとムーブメントの関係
私たちは、動きたい時に自由に動き、止まりたい時に自由に止まりたい欲求があります。
こどもは動きながら、脳が成長していきます。ハイハイして行きたい場所にいきますよね。危ないからと、それを毎回止められたらどうなるでしょうか?
他には、小さいこどもは食べたくないものを口に持ってこられたら、イヤッて手で払いのけたりもしますよね。その払いのけた手を毎回のように親に叩かれたらどうなるでしょうか?
こどもは、欲しいものがあれば、手を伸ばしてリーチしますよね。それさえも許してもらいないとしたら….
様々なトラウマは、その「したい」行動を妨げてくるのです。動きたいのに、止めさせられる。その解放されたがっているエネルギーを解消するのがトラウマセラピーとも言えます。
心理カウンセラーは、クライアントに動きが出てきた時に、それが何の動きなのかを把握することが大事です。
トラウマセラピーの現場でよく出てくる動きを1つずつみてきましょう。
闘争の動き
暴力を振るってきたやつを、「なにしとんねん! あっちいけ!」とやり返したい衝動があるのが自然です。
でも多くの場合、それは叶わない、相手が大人だったり、強かったりするから。
そのやり返したい動きを、止められるのです。その止められた動きを最後まで「完結」するのがソマティックなアプローチですね。
カウンセリングの現場なんかでは、押したい動きが出てくることよくあります。座ったまま、腕でクッションを押してもらったりなどしていきます。
全身を使ってする場合もあります。クライアントが立って、セラピストを押し切ったり。相撲のように土俵側まで押し切っていくというイメージです。
やり返していいのです。うざいやつにNOと言って。いいのです。押し返しても。
止められた、最後まで出来なかった「動き」を完結させることは、心と体に大きな変容をもたらします。
逃走の動き
やり返したい(闘争)のもあれば、逃げたい(逃走)というのもよくあります。まさに字のごとく、走って逃げるのです。
トラウマの時は、それが出来なかったわけです。逃げれないのも当たり前です。怖かったし、ショックだったし。
その「逃げる」をカウンセリングやればいいのです。
ある程度、回復が進んでくると、逃げ出したい感覚というのが出てくることが多いです。
その時に、イメージの中で走ってもらったり、実際に足をバタバタさせたり、クライアントさんに合わせて、様々な「逃げる」を完結させてあげたりします。
「体を後ろに少し反る」というのもよくある逃走反応です。トラウマ時に、体をそらして逃げれなかったということです。ほんの後ろに少し下がるだけで、大きな解放が起こることもよくあります。
逃走の動きは、顔をそらす、目をそらす、立ち去る、などなど色々あります。
「逃げることは弱いことだ」という価値観があるのではないでしょうか。いいんです。怖くても。いいんです。逃げても。
ソマティックなセラピーを段階をおってしっかり進めていくと、闘争や逃走の衝動が出てくるということです。いきなり出てくるものではないです。
解離、フリーズから抜け出る動き
シャットダウンしている状態から、抜け出る時にも、「動き」に働きかけましょう。フリーズして動けないところから、どこか動かしやすいところを見つけるのです。
足首をぐるぐる回すことかもしれないし、腕を動かすことかもしれない。
そのような動きを、ゆっくりやるということです。意味があってフリーズしているのです。一気に抜け出ないくていいのです。言い換えれば、一気に抜け出ない方がいいのです。
時間をかけて、動いてもいいんだと、少しずつサポートしていくことがポイントになります。
闘いたい動き、逃げたい動き、解離から抜け出る動き、の解説をしましたが、文章で読んでるだけではピンとこないかもしれません。
この辺は、自分が体験しないと分かりづらいと思います。
次の「感情の動き」は、もうちょっとわかりやすいと思います。
感情を表す動き
歌手が歌うとき、感情をのせて動きが出てきますよね。あなたに届いて欲しいという気持ちを表現するのに、手を前に出したりしますよね。
辛い切ない気持ちで歌っている時に、胸に手を当てたりとか。ミュージカルでも大きな動きがありますよね。
心理カウンセリングの現場でも、怒り、悲しみ、恥、恐怖、様々な感情が出てきます。その感情が出ている時に、クライアントに様々な動きが出てきます。肩に力を入れたり、目をキョロキョロさせたり。
しっかり観察すると微細な動きもかなり沢山あります。ほんの1センチ左に傾いたり、のけぞったり。そんな変化を捕まえることが大事です。
そのような動きを探求することが、感情を解放するヒントになります。
ポジティブな感情も
安心感、喜び、安堵感、達成感、幸福感などの感情が出てきた時も、体に動きが出てきます。
現場のカウンセリングで、よく観察してみましょう。
クライアントは、小さなジェスチャーをしていたり、微細な動きがあります。
それをカウンセラーがちゃんと観察して、伝えしましょう。その動きをじっくりやってみたり、そのジャスチャーに浸ってみたり。
トラウマセラピーでは、痛みばかりを扱うのではなく、ポジティブな感情も拾っていく必要があります。リソース的なことをすればいいのです。
ワークをしてみる
突然ですが、今ちょっと実験してみませんか?
少し時間をとって感じるワークのための準備をしてみましょう。
少し伸びをしたり、姿勢を整えたり、マインドフル状態になったり。
あなたにとって、一番大事な人は誰ですか?
もしくは、一番愛してくれた人、一番認めてくれた人、でもいいですよね。
少しでも寄り添ってくれた人いますよね。
その人はどんな表情をしていますか?
ゆっくりと、、、
その人はどんな言葉をかけてくれそうですか?
その人の存在を感じてみるのもいいですよね。
そして、、、その人を感じていると、どんな動きが、、、出てきますか〜?
胸に手を当てる感じでしょうか?
あったかい感じがあるのであれば、それをあらためて感じてみると、、、
それに浸ってみましょう。ゆっくり探求してみましょう。
その大事な人のつながりをより強く感じられるかもですね。
リソースになる動き
トラウマから回復するには、リソースが大事。
というようにいつもお伝えしていますが、動きもリソースにしていくといいです。
クライアントさんは自然に自分を落ち着かせるために動いておられます。
例えば、右手で左手をさする、腕をさする、伸びをする、体を前後に揺らす、などなど。
クライアントさんが無意識でやっている場合がほとんどです。だから支援者が伝えてあげるのです。
「今、腕をさすられましたね〜。」「そうしてるとどうなりますか〜?」というような流れで。
ただ無意識にやっていた行為から、
自分を大事にするリソースフルな動きと意味づけられます。
揺れるという動き
体を前後や左右に揺れるのもリソースになります。こどもは自然にやってたりもします。揺れていると落ち着いてきます。
赤ちゃんが寝る「ゆりかご」で揺らせるやつありますよね。なぜ揺らすのでしょうか? 落ち着くからですよね。こどもが寝やすいからです。
電動で揺らしてくれるのもあるようですね(笑)
この揺れることを英語では「Rocking」と言います。海外のLeslie Korn先生も揺れることについて伝えています。
こどもでも、大人でも落ちつけたり、睡眠の効果が上がるのです。英語で「Rocking chair」と言います。
あの前後に揺れる椅子のことです。最近日本でも「ロッキングチェア」と呼ばれているようです。
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あなたも今、前後か左右か、揺れたいように揺れてみませんか?
眠くなるかもです(笑)
体の叡智に寄り添う
心理カウンセリングで「動き」を観察したり、探求したり、変容することは、必須になります。
「体」が動いているのです。体が動いて教えてくれているのです。
「ほらほら、私の動きをちゃんとつかまえて〜」というように(笑)
セッションで色々な動きが出てきますよ。カウンセラーは、ただの動きと捉えずに、なんの動きなのかを理解してみましょう。
逃走の動き? 闘争の動き?
リソースの動き? 人つながりたい動き?
感情を解放したい動き? 感情を表現している動き?
セルフケアの動き? もう無理と降伏している動き?
あと大事なのは、どんな心理療法を使えばいいのか? クライアントの悩みの原因は? みたいなことばかりに意識が行き過ぎていると、目の前の「動き」を見逃してしまいます。
悩みを解決するヒントは、目の前のクライアントにあるのです。
「動き」に意識を向けると摩訶不思議な世界が見えるかもです。