「空虚感があります」
そう言われた時に、心理カウンセラーとしてどのように対応していけばいいのか?
海外の先生の対応法も参考にしながらお伝えしていきますね。
動画からどうぞ。
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コンテンツ
トラウマからくる空虚感の初期対応
ハーバードの医学部で30年教えてきた、ロンシーゲル先生の対応とは?
先生の発する言葉はいつも感銘を受けます。
空虚感を改善するには「空虚感を明確にすること」なのです。
どのような意味でその言葉を使っているのか? ということです。クライアントさんにとって空虚感と言っても色々な意味で使われます。
例えばどんな言葉として使われるのか、1つずつみていきましょう。
虚無感
虚無感も空虚感と同義語のように使われることもあります。
詳しい定義がどう、ということが大事なのではなく、クライアントさんがどのように使っているのか?なのです。
うつ、無気力感
うつっぽい状態なのか? 空虚感なのか? うつだから空虚なのか? 逆なのか?
この辺をしっかり紐解いていきたいですよね。
解離、離人感、無感情
解離や離人症といった、感じないという意味の低覚醒の状態あれば、空虚感も自然と出てきやすいのです。
ちょっと後に出てくる、ポリヴェーガル理論のところでより明確になるでしょう。
感情がないという状態も空虚な感じがしそうです。楽しい、嬉しい、というような感情が薄いと、生きている実感も薄いですよね。
悲しみ
悲しみという感情は、行動に繋がらないというのもあります。
内側に向いている感情とも言えます。
例えば、大事な人を失って深い悲しみの中にいると、なんのために生きているのか? という空虚感も出てきそうです。
目的意識が薄い
心の健康度が比較的高めの人でも、毎日自分のやりたい事をやれない人生だと、やりがいがないですよね。
目的意識がほとんどなくて、ただ毎日の繰り返し。そんな生活が続くと空虚な感じがしても自然ではないでしょうか。
寂しさ
寂しさは、人と繋がっていない状態とも言えますよね。
人との繋がりが気薄な人生だと、感動も感謝も半減しそうです。人との繋がりということが、空虚感を改善するヒントになりそうです。
空虚感という概念は包括的
空虚感という概念は、他の概念と比べて「より」他の状態と混合しやすいのです。
そして、空虚感という概念は広くて、様々な概念や状態を包括しているとも言えますよね。だからこそ、より明確にする必要がある。
支援者はそのような見立てを持っておくということです。
「感情がない」というのと、「寂しさ」それぞれ対応が変わってきますよね。このように明確にするというシンプルなことですが、とても大事です。
クライアントさんの内的な世界はどうなっているのか?
それを教えて頂く、そこに寄り添っていく感覚で進めると、自然とこのようなアプローチになるとも思っています。
ポリヴェーガル理論との関係
トラウマ業界に革命を起こしたというポリヴェーガル理論からも空虚感を考えていきましょう。
空虚感は、背側迷走神経が司る、シャットダウン系のシステムと深い関係があります。
エネルギーがなくて、感情が少なくて、やる気が起きない状態。
うつ、離人症、低覚醒と言った状態が空虚でもあります。
そうだと知っておくと、現場でのカウンセリングでそのような見通しができます。
低覚醒状態というのは、特に急いで治そうとか、変えようとしないとか、時間をかける必要があるとわかりますよね。
空虚感や虚無感を減らすソマティックなアプローチ
トラウマと身体で有名で、センソリーモーター心理療法の創始者であるパットオグデン先生こう言われます。
どのようにその空虚感を身体で感じているのか? を探ることが重要だと。
そのように聞いていくと「胸に穴が空いている」「崩れ落ちる感覚」ということが多いとのこと。
こことても大事なポイントです。
確かに、私自身も臨床の現場でよく聞きます。「自分の中心(胸)あたりに、ぽっかり穴が空いている」というのも聴きます。
胸の辺りは、愛情とか、人との関わりと深い関係があるので、そのようなものを受け取りにくい状態でもあるのです。
もう一つの「崩れ落ちる」という感覚は、もう無理という降参する反応とも言えそうです。
戦っても、逃げてもダメな時、もう降参するしかないですよね。そんなシャットダウン系の感覚が空虚感と関係しているのだと思います。
ソマティックなリソース
先生はさらに続けて言われます。「ソマティックリソースだよ」
リソース的なもの、自分の心や体に栄養となるものを受け取れないのが空虚感とも言えます。
ナリッシュメントと言われたりもします。そのような心の栄養が不足しているのです。体にエネルギーが充満されてない状態なのです。
まるで、どこかに穴が空いていて、エネルギーや活力が、どんどん流れでていくようなことなのです。
食事に例えると、食べても食べても、栄養を吸収しにくい体というようなことです。吸収しにくい体を改善することでよくなっていきます。
ケアを受けても、ケアを受けても、リソースを感じても、満たされない。
そのような状態はネグレクトと関係しているのです。その辺をみていきましょう。
空虚感とネグレクトからみる改善方法
「触れられなかった」「かまってもらえなかった」「注意を向けてくれなかった」
そのようなネグレクト的な親がいる環境で育つと、健康的な感情も育ちにくいです。
そして、その感情がない感覚を空虚感や虚無感と呼ぶこともあります。
体のどこかに穴が空いている状態でもあるので、愛情やケアを受けても受けても、流れ出ていくようなものです。
幼少期にそのような愛情を受けれないネグレクトは、脳に多大な影響を及ぼします。私たちの想像以上にです。
大人になって、愛情やケアを極めて受け取りにくい状態になっているのです。という背景がわかっていると、時間がかかる事が予測できるわけなのです。
クライアントとカウンセラーで、焦らずゆっくりと、でも着実にリソースを受け取れる状態を目指していくことが大事なのです。
少しずつ関わる事で、空虚感が減っていきます。人にも関わってもらいながら、自分でも少しずつ自分をケアする事をやっていくのです。
内的家族システム療法からみる空虚感の克服方法
リチャードシュワルツ先生は空虚な感覚は、パーツ的には「追放者」であると言われます。
さっきのネグレクトという観点から考えると、まさにネグレクトされたパーツが追放者なのです。
トラウマ的な傷つきをひとりで抱えて、他のパーツから追放されたパーツなのです。そのような追放されたパーツが空虚感を抱えているとも言えます。
大事なポイントは、その部分にいきなりアクセスしないということです。
リソースのパーツを強化したり、管理者的なパーツなど、守っているパーツに許可を取る必要があります。
許可が降りたら、空虚を感じているパーツと対話します。
その元になるトラウマや傷つき体験にアクセスすることも最終的には必要な時があります。
このようなパーツへの関わりが空虚感を改善する上でとても役に立ちます。
様々なタイプがある
空虚感と言っても様々原因があります。例えば、目的意識がなくて日常生活が虚しいというような生き方とも関係しています。
この辺は心の健康度が高い人もそうなるということです。
それとは対照的に、ネグレクトなど重いトラウマからくる空虚感は、お伝えしたように丁寧に関わっていく必要があります。
その関わりの中で、内的家族システム療法などのパーツ心理学、ソマティックなアプローチ、リソース構築、というようなことが必須になるのです。