心理セラピーの60分の中で、実際に何が起きているのか。
多くの人は、セラピストが特別な言葉をかけたり、
鋭い分析をしたりしていると思っています。
しかし、実際に私がセッションの中で大切にしていることは、たった4つです。
今回は、「暗い家」という一つの比喩を使いながら、
心理セラピーの本当の姿をお伝えしていきます。
コンテンツ
リフレクションの奥義|相手に伝わるやり方
4つのうちの1つ目をお伝えしますね。
それが「リフレクション」です。
相手の言ったことを伝え返すやつね。
例えば、クライアントが、「最近、何をやっても上手くいかない」
「もう、世界が灰色のようです」そんな話を5分する。
で支援者が、ふんふん聞く。
その後、「つまり、仕事でこんなことがあって、人間関係でもこんなことがあって、
ずっと頑張ってきて、もう限界ということですね」
そんなふうに、綺麗にまとめて返そうと頑張る。
ちゃんと理解したよ、ということを伝えたくて。
でもこれ、とても疲れる。
相手にも届かない。
コールセンターの人じゃん(笑)
私は、こうやって、まとめて言い返すのは1年に1回あるかないかです。
本当に大切なのは、上手にまとめることではないのです。
じゃあ、どうすればいいのか?
相手の言葉の奥にあるものを、感じ取ることです。
そして、それを一言で返す。
「怖いんですね」
「寂しかったんですね」
「もう、疲れた⋯⋯」
そんな短い一言の方が、相手の心に届きます。
なぜなら、その人は、真っ暗な家の中にいるようなものだから。
どこに何があるのか。
出口がどこなのか。
何も分からない。
ただ怖い。
そんな暗闇の中にいる人に、「この家はこういう構造で、部屋が暗くて、
あなたは怖いのですね」と言い返しますか?(笑)
心理セッションで、まず求められることは?
まず必要なのは、一緒に暗闇の中に座ることです。
そしてクライアントを感じて、「怖いですよね」と優しく言う。
その一言で、初めて、一人ぼっちだった暗闇に、支援者が入らせて頂ける。
その隣には、ポムもいます(笑)
ポムは、この家の構造を知らない。
どこに出口があるのかも知らない。
でも、目の前の人が、怖がっていることだけは、ちゃんと分かってる。
だから、何も言いません。
ただ、静かに隣に座っています。
実は、深いリフレクションも、似ています。
正しい言葉を探すことより、まず、その人の暗闇の中に入って、一緒にいること。
そうすると感じ取れる。
それを一言で伝えるだけ。
これ、思った以上に難しいことです。
これが、暗い家の旅の、最初の一歩なのです。
心理セラピーで2つ目にやる大事なこと|質問
心理セラピーでやることはたった4つ。
前回は、暗い部屋にいるクライアントに寄り添うことをお伝えしました。
それが1つ目のリフレクションです。
言葉の奥にあるものを感じ取り、短い言葉で返していく。
そして、2つ目の大切なことは……質問です。
初心者の頃は、質問を情報を集めることだと思いがちです。
「いつから?」
「どんなことがあった?」
もちろん、それも大切です。
でも、暗闇の話だけをして60分が終わってしまう(笑)
だから、こう質問していくのです。
「足元に何かありませんか?」
「懐中電灯は近くにありませんか?」
少し勇気を出して、スイッチを入れてみる。
小さな光が暗闇を照らします。
「左の方はどうでしょうか?」
すると、小さく尻尾を振っているポムがいました(笑)
「ここにいるよ」とでも言うように、静かにこちらを見ています。
その隣には、思い出が綴られた日記が置いてある。
質問ひとつで、暗闇の景色は変わる
「少し別の方向にも光を当ててみませんか?」
そう質問します。
もう一度、懐中電灯を動かしてみると……
さっきまでは見えていなかった場所に、
子どもの頃、夢中になって弾いていたバイオリンが置いてある。
「そのバイオリンで、よく弾いていた曲はありますか?」
そう質問します。
すると、忘れていた景色や、その時の感情が出てくる。
そうやって、見つけたものにも、もう一度光を当てていく。
それもまた、大切な質問なのです。
暗い部屋の中には、怖いものだけではない。
今まで自分を支えてくれていたものも、ちゃんと置いてある。
セラピーでは、こうした支えになるものをリソースと呼びます。
質問とは「どこに光を当てるのか」なのです。
そして、見つけたものに、もう一度光を当てていくこと。
どこに光を当てるのかは、マニュアルでは決まらない。
目の前にいる人を感じながら、今、どこを照らすことが必要なのか。
それを選んでいきます。
それが、本当の質問なのです。
質問で光を当てた後、もう一つ大切なことがあります。
次回は、暗い家の中を安全に歩くコツについて。
心理セラピーで3つ目にやる大事なこと|促し
懐中電灯を持ち、暗闇に光を当てる話をしました。
質問とは、答えを探すことではなく、どこに光を当てるのか。
では、光を当てた後、次に何をするのでしょうか?
そこで大切になるのが⋯⋯促しです。
身体志向のセラピーの現場では、こんな言葉をよく聞きます。
「それを体のどこで感じますか?」
「その感覚にとどまってみませんか?」
もちろん、それ自体が悪いわけではない。
でも、相手によっては、それが脅威になることがあります。
体を感じないようにして、頑張って生きてる人もいる。
例えば、暗闇の中で、怖い扉を見つけたとします。
その扉の向こうには、ずっと見たくなかったものが、あるかもしれません。
まだ足が震えているかもしれない。
そんな時に、「扉を開けてみましょう」「中に入ってみましょう」
怖いこと言うなや〜 ってなる(笑)
だから、ちゃんと神経系の状態を見て促しをする必要があるのです。
「窓の外を見てみませんか?」
「足の感覚を感じてみませんか?」
そうやって、怖さから少し距離を取る。
それも、大切な促しです。
促しの本質とは|距離感の調整なのです
一方で、懐中電灯の光の先に、ポムがいました。
こちらを見ながら、静かに尻尾を振っています。
そんな時は、もう少し近づいても大丈夫そうなら、こう促しをしてみる。
「ポムに近づいてみませんか?」
「隣に座ってみませんか?」
「頭を撫でてみませんか?」
すると、ポムの温かさ。柔らかい毛並み。少しホッとする感じ。
それを、もう少し味わうことができる。
これも、大切な促しです。
促しとは、ただ何かをやってもらうことではない。
近づく。離れる。休む。
そしてまた、少し近づく。
その人の神経系の状態を感じながら、体験との距離を丁寧に調整していく。
それが、促しの本質です。
実は、この距離の取り方ひとつで、暗闇の旅は、大きく変わります。
でも、暗い家の中を歩いていくには、まだ、もう一つ大切なことがあります。
心理セラピーで4つ目にやる大事なこと|心理教育という地図
心理セラピーでやることはたった4つ。
1 リフレクション
2 質問
3 促し
4 この部分をお伝えしますね。
暗い家の中を歩いていくためには、もう一つ大切なものがあります。
それが、地図です。
例えば、真っ暗な家の中にいるとします。
どこにいるのか。
どちらへ進めばいいのか。
何も分からないまま、歩き続けるのは、とても不安なことです。
だから、セラピストは、地図を渡します。
今、自分がどんな状態なのか。
今、自分がどこにいるのか。
それを知ってもらうためです。
そして、これから、どんな方向へ進んでいくのか。
その全体像を理解してもらうためです。
これが、心理教育です。
もちろん、セラピストは、その家のすべてを知っているわけではない。
家にいくつ部屋があるのか?
どんな家具があるのか?
その引き出しには何が入っているのか?
全く知らないのです。
懐中電灯を持ちながら、その人と一緒に探していく
足元には、いつものようにポムがいる。
ポムは、地図を読めない。
この家の構造も知らない。
でも、隣で一緒に歩いてくれます。
暗くて、立ち止まる時もそばにいてくれる。
だから一歩ずつ一緒に進める。
心理セラピーも、少し似ています。
全体像の地図を持っていること。
リソースや土台作りをまずは丁寧にやっていく。
そして、どのようにトラウマに入っていくのか?
今の神経系がどういう状態なのか?
何を実践していけば少しずつ楽になっていくのか?
それを地図を使って心理教育していくのです。
支援者が相談者に伝える必要があります。
でも、実は、もう一つ、もっと大切なことがあります。
暗い家の旅で、一番大切なことについて
心理セラピーでやることは、たったの4つ。
1.リフレクションで、暗闇の中に一緒に座る。
2.質問で、懐中電灯を持ち、どこに光を当てるのかを探す。
3.促しで、近づいたり、離れたりしながら、体験との距離を調整する。
4.心理教育で、今どこにいて、どんな方向へ進んでいくのかという、地図を持つ。
ここまで来ると、「じゃあ、この4つができれば、いいセラピストになれるのか」
と思うかもしれません。
でも、本当に大切なのは、その先にあります。
「怖いんですね」とリフレクションしても、相手に届かない時もある。
同じように、「それに近づいてみませんか」という促しも、
リソースになる時もあれば、脅威になる時もある。
同じ言葉でも、なぜ、違いが生まれるのか?
それは、目の前にいる人を、本当に感じているかどうかです。
声の震え。表情。呼吸。身体の緊張。
それらを感じながら、その時、その人に合った、
リフレクションをし、質問をし、促し、地図を渡していくのです。
だから、心理セラピーは、マニュアル通りにはできない。
地図を持っていることは、大切です。
懐中電灯を使えることも、大切です。
でも、もっと大切なのは、暗闇の中で、一緒にいられることです。
支援者が怖さから、逃げないこと。
無理に、前へ進ませないこと。
その人の歩幅で、隣を歩くこと。
それが、暗い家の案内人に、一番必要なこと。
一緒に歩いていると、気がつけば、暗い家の出口が、少しずつ見えてくる。
そして、その隣には、いつもポムがいます。
ポムは、地図を持ってない。
懐中電灯の使い方も、知らない。
しゃべることもできない。
ただ、そばにいてくれる。
相手を感じながら。
何も変えようとせず、ただ、隣に座ってくれる。
そんな在り方が求められるのかもしれません。
「どうやって助けるか」よりも、「どうやって、そこにいるか」
誰かの暗闇の中で、静かに一緒にいられる自分になっていく。
支援者にも、そういう成長の旅が大切なのです。









