総合トレーニング参加者の水澤です。
オリエンテーションは? と言われてドキッとしたことはありますか?
自信を持ってこの心理療法をやっています! と言えますか?
正直、私はずっとビクビクしていました。
でも今は落ち着いて言えます。
不安から安心へ行きついた、そんな私の体験を今日はお伝えしたいと思います。
コンテンツ
神経系の危機~(ポリヴェーガル理論?)
勤め先のスタッフルームで休憩していたときのことです。
「水澤さんのオリエンテーションってなんですか?」と問う声がしました。
ドキッ。
見上げると、そこには同僚の顔。
精神分析をみっちりと勉強し、学会発表などもバンバンしてる「できる女性」です。
「えっと、せ、折衷ですかね…学生の頃は分析系のゼミで…
でもロジャーリアンの先生にも習ったりして…あ、ロールシャッハは片口式です。」
と、とにかく言葉をつなぐ。
しどろもどろです。
背中には冷や汗が。。。
それなりに研修にも行きました。
スーパービジョンも受けました。
でも私には胸を張って言えるオリエンテーションがなかったのです!
そのことにずっと後ろめたさを感じていたのもの事実。
冷や汗が出てくるところからして、神経系が反応していることがうかがえます(笑)
ポリヴェーガル理論的にいうと、腹側迷走神経系から交感神経系へ行っていました。
オリエンテーションがないことはずっと引っ掛かり続けていました。
「あなたのオリエンテーションは何?」
あなたは、どう答えますか?
そもそもオリエンテーションって何?
オリエンテーションの言葉の意味としては、「方向づけ」となるようです。
心理士業界だと、その人の支持している心理学の理論(または学派)のことと言えるでしょう。
世の中にはたくさんの精神療法がありますよね。
フロイトが考えた精神分析。
心には意識と無意識の世界があり、無意識に抑圧された感情や記憶を意識化します。
厳密に言うと、ある一定のトレーニング受けた人だけが精神分析家と呼ばれるのです。
胸を張ってオリエンテーションは精神分析です! と言えることになります。
ちなみに、この精神分析家は日本で40人程度いると聞きました。
また、ロジャースの来談者中心療法もセラピーの基本として学ぶ方が多いでしょう。
カウンセラーは傾聴を基本とし、クライエントが気づき成長していくこと促すアプローチです。
ロジャースの理論を使って臨床をしている人はロジャーリアンなどと言ったりしますよね。
その他、行動療法、家族療法、ゲシュタルト、交流分析、認知行動療法、対人関係療法、
などなど世の中にはたくさんの療法がありますね。
つまるところ、「オリエンテーションは何ですか?」という問いには、
「あなたは一体何の理論を勉強してきたのですか(使えるんですか)?」
という意味が込められているように思えます。
そして、私はずっと勉強が不足していると感じていたので「ギクッ」としたわけです。
何の理論をベースに心理療法をやっているのか?
臨床に出て10年くらいたつと、心理士としてのアイデンティティが定まってくると思いますが、
私はそれがあやうかったのです。
そもそも私が「オリエンテーションは何ですか?」と聞かれてドキッとした背景には、
自分の中にある「勉強が足りていない」という『劣等感』がありました。
意識していたのは「自分」のことです。
視点の矢印が自分に向いていたのです。
つまり、クライエントのためになっているか、というより
「私が足りているか」ということだったのです。
「オリエンテーションは何ですか?」という問いは、
「あなたは人に言えるほど勉強してきてるの?」とすり替えられて聞こえていたのです。
「私は」勉強が足りていない、
「私は」臨床のより所がない、
「私は」どう見られているのか、
「私は」ばかりですね(笑)
本来なら、「クライエントがよくなるための」オリエンテーションのはずが、
自分が安心するための材料になっていたようです。
言葉のカウンセリングをオリエンテーションとした場合
私は臨床に出てから多くの時間を言葉のやり取りのカウンセリングにあててきました。
たとえば、「手術がこわい」というクライエントに対して
私:「そうなんですね、手術がこわいんですね。」
Cl:「手術が必要なのは分かってるんですけど、どうしても病院に行く気になれなくて。」
私:「行く気になれないんですね。そこには何かあるんでしょうか。」
Cl:「実は。。。」
実際のカウンセリングではもっとたくさんのやり取りの後で、「実は。。。」が出てきます。
「実は、幼少期、手術後に家族が亡くなっている」というような。
それを語り、それに共感しながら理解を深めていく。
これだけでもクライエントの中でモヤモヤしていたものが言語化されて整理がつきます。
結果として、こわい思いはするものの、病院へ行って手術を受けられた、となることもあります。
そう、なること「も」あるのです。
ならないこと「も」あるのです。
クライエントの健康度が高ければこれでOK。
めでたしめでたし、です。
でもトラウマを負っていると、幼少期の経験を思い出したことで、
次の日から起きられなくなってしまったりします。
日常生活がままならなくなることがあるのです。
それは、クライエントの「健康度」の問題で、
状態が悪いからある意味仕方がないという思いが私の中にありました。
ソマティックなアプローチをオリエンテーションとした場合
では、ソマティックなセラピーだったらどうでしょうか?
相談者が「手術がこわいんです」と言った瞬間に、
セラピストは、体の変化も観察しています。微細な体の動きや表情の変化などです。
そこに留まったり、気付いたりしてもらいます。
例えば、お腹を守るような姿など。
まずはリソースを構築していく選択が必要な時もあります。
そう進めていくと、恐怖感が薄らいでくる。
結果、クライエントが安心・安全な状態で手術を受けられるのです。
言語的なやり取りの時は、クライエントは「こわい状態だけど」手術を受ける。
ソマティックな場合は、「大丈夫な状態で」手術を受ける。
結果が違いますね?
それは、カウンセリングが目指す最終形だと思うのです。
あなたのオリエンテーションは何ですか?
いま、「あなたのオリエンテーションは何ですか?」と聞かれたら
「ソマティックをベースにして統合的にやってますよ。」と答えられます。
そこに「ドキッ」としたり、冷や汗が出てくる反応はありません(笑)
そこには3つの要因があると思います。
① 自分の神経系が整った
② トラウマと身体の関係を理解しながらカウンセリングを進められるようになった
③ ①+②で、クライエントの役に立っている実感が得られるようになった
①②③、どう思いますか?
自分が整ったから、相手が整うことをお手伝いできるようになった。
そのための理論やスキルがソマティックにあったということです。
結果、臨床に出ている時、臨床以外の時も、より所が定まったという感じです。
自分の身体にアクセスし癒すことができるようになると、
結果的に臨床のアイデンティティも定まるんですね。
今でも、カウンセリングをしていて緊張したり不安になったりすることはあります。
ですが、そこから戻すソマティックなやり方を学んだことはとても大きいです。
カウンセラーが安全でいることは、クライエントが安全モードに戻ることを手伝う第1歩ですね。
さて、あなたのオリエンテーションはなんですか?(笑)