内的家族システム療法は、今注目のアプローチです。わかりやすく、現場でも使えるように実践的にお伝えしますね。
そして、海外ドラマの「プリズンブレイク」を例にも解説していきますね。
なぜ効果的なのかと言うと、とっても温かいアプローチだからです。
まずは動画から見ると理解しやすいです。
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より詳しくは記事を読み進めてみてくださいね。
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内的家族システム療法(Internal Family Systems Therapy)とは?
略してIFSと言います。IFSはパーツ心理学の1つのアプローチです。創始者はリチャードシュワルツ先生です。
IFSは、2つのパラダイムから出来ています。1つは、多重のマインド。要するに、私たちの中には、様々なパーツが存在するということです。
もう一つのパラダイムはシステム理論。内的な世界、家族、コミュニティー、文化、さらには社会というシステムがあります。それぞれの中に、様々な人やネットワークがあり、システムとして機能しています。
では、これよりIFSにおける基本となる、3つのパーツをご紹介していきますね。
追放者(Exiles)というパーツ
トラウマや愛着の傷つきを経験すると、その辛さを引き受けるパーツがあります。それが追放者。
このパーツは、過去に置き去りにされたと感じているし、過去のトラウマ記憶を抱えている。だから、トラウマパーツ、排除されたパーツという見方もできます。
このパーツは、愛とケアを求めています。助けて欲しいから、そのためには手段を選ばないこともあります。怖がっていて、ふさぎこんでいるようなパーツさんのことです。
俗に言う、傷ついたインナーチャイルドという見方も出来ますが、追放者という概念はもっと包括的で、他のパーツたちとの関係性によって存在しているのです。
人は追放者パーツだけでは生きていけません。このパーツを守る役割のパーツが必要になります。それをご紹介していきますね。
管理者(Managers)というパーツ
そのままですが、管理するパーツです。戦略的に自分の環境をコントロールします。
例えば、引きこもることで人と関わらないようにする。他には、起業を成功させて、自分のやりやすい環境で仕事をします。
そうする理由は、その人全体を管理しているのです。傷ついた追放者を守るために。他のパーツを守るために。
感情が出てくるような場は避けるし、感情を普段から抑圧しています。
考えて、悩んで、調整したり、コントロールしているのです。だから疲れます。疲れるからこそ、次に紹介するパーツも必要になってきます。
消防団(Firefighters)というパーツ
消防士の役割は、火を消すことですね。傷ついた追放者は、感情という火を放っています。怖い!ムカつく!悲しい!と主張している。そんなことを毎日考えていたら、私生活に、仕事に影響が出ますよね。
だから、消防団がそれを定期的に消すのです。さらに、管理者パーツだって、全てのパーツの危機管理に疲れ果てています。だから、それを癒すという目的もあります。
火を消したり、疲れを癒す方法が、麻痺させることなのです。だから、消防団は依存行為が得意なのです。アルコール、セックス、食べ物、薬物、ショッピング、どれでもいいのです。麻痺させるのが目的なだけなのです。
あとは、衝動的な行動もそうですし、怒りを出すような傾向も消防士にはあります。
追放者、管理者、消防団、この3つをより理解するためにも海外ドラマから考えてみましょう。
海外ドラマを通じて内的家族システム療法を解説
実は海外ドラマのプリズンブレイク、大好きなんです(笑) 大丈夫ですよ、聞いたことなくても。
この人気ドラマは、無実の罪を着せられて、刑務所に入れられた兄を、弟が自ら刑務所に入って脱獄させる話です。
弟は戦略的に環境をコントロールする設計者
この弟が主人公のマイケルスコフィールド。彼は構造設計者であり、脱獄するプランを詳細に考え抜くんです。
2つの化学物資を混ぜて、鉄を溶かして、脱走ルートを作ったり。受刑者が入れられる部屋から巧妙に穴を開けて脱出したり。それらを他の囚人の人脈を使って、脱獄に必要なものを手に入れていくのです。
その壮大な計画を全身にタトゥーを入れたのです。ここまで読んでピンときましたでしょうか? このマイケルの完璧主義的な行動はどれに当てはまると思いますか?
管理者ですよね。無実の兄を守るために、戦略的に自分の強みを生かしてますよね。
だから管理者というのは、スーツ姿のリーダー的なインテリみたいなイメージと理解するとわかりやすいと思います。
兄は結果を考えずに突っ走る熱いやつ
さて次に、無実の罪を着せられた兄(リンカーン)は、まともな職にもつかず、盗みを繰り返したり、悪い奴らとつるんでいました。ドラマの中でも、怒りっぽい性格が目立っていました。
ストリートに生きているみたいな。だからパーツで言うと、消防団なのです。怒っていて、喧嘩を繰り返して、依存に走って、どろくさく必死に生きている。
弟のマイケルがインテリならば、兄のリンカーンはヤンキーみたいな存在です(笑)
よく映画とかのキャラでもありますよね。兄弟でも姉妹でも、どちらかがインテリで、もう一人がヤンキーみたいに。そんな感じです。
追放者を守っている
この兄と弟2人は、なぜそんなに必死に生きているのか?
この2人は小さい頃に親に捨てられているのです。そんな辛さ、悲しみをこどもの頃から抱えて生きてきたのです。
2人は、それぞれの方法で自分を守り、適応して、お互いをサポートし合ってきました。追放者を守ってきた2人の生き方だったのでしょう。
管理者というパーツも消防団というパーツも、それぞれ違うやり方だけど、共通するところは守るという役割なのです。
よく言えば守るという目的があるのですが、傷ついた追放者が出てこないように、隅っこに押しやっているとも言えます。
文字通り、追放したり、排除しているのです。排除しながらも、守っているという視点が大事です。
内的家族システム療法(パーツワーク)をカウンセリング現場でやる
このアプローチだけに限りませんが、パーツ心理学的なアプローチは温かいのです。診断的ではなく、スティグマを押し付けるものでもないのです。
例えば、守るために、生き延びるために「あなたの中には、過覚醒や強迫的な傾向を活用してき管理者というパーツさんがいるのですね」という見方ができます。
真逆の見方は、「あなたは強迫性障害ですね。治療法を考えて一緒に治していきましょう」となってしまいます。「一緒に」なんて言ったところで、温かさも何もないですよね(笑)
ちょっと補足なのですが、管理者には2種類あって、達成重視な管理者と悲観的な管理者がいます。
例えば、達成重視というのは、さっきのマイケルみたいなことですよね。悲観的というのは、引きこもることで、人と関わらないという方法で危機管理をする傾向です。
世にある精神疾患というものは、この3つで説明できる?
ここでまとめると、
パニック、強迫、過覚醒、これらの傾向は達成重視の管理者がやっている。
うつ、無力感、引きこもり、これらは、悲観的な管理者がやっている。
様々な依存行為、怒りなどの衝動を抑えようとする傾向、これらは消防団がやっている。
トラウマ記憶を抱えて、傷ついていて愛や助けを求める行動は、追放者がやっている。
ここで思いませんか? いわゆる世の中にある〇〇障害とか、精神疾患とか、この3つで説明できそうです。
この3つのフレームワークの考え方を目の前のクライアントさんに当てはめて考えてみるのが大事なのです。
もう一つ大事なポイントは、自分自身の中に管理者、消防団、追放者が、それぞれ1つずつ存在しているのではないのです。
管理者パーツはいくつもあります。追放者もいくつもあります。消防団も。
英語では、管理者のことをManagersと呼びます。最後に、複数の (s) がついてますよね。消防団はFigherfitersというように。
セルフという存在
自信がある自分であったり、好奇心、穏やかさ、繋がり、慈悲、創造性などがありますよね。内的家族システム療法では、それらはセルフと呼んでいます。
リーダーシップ的な中核の部分とも言えるかもしれません。他のパーツたちをまとめたり、話し合いをガイドする存在でもあります。
仏教で言うところの仏性、仏界みたいなものです。私たちの中にある「大いなるもの」「小宇宙」とも言えます。
管理者と消防団が傷ついた追放者を守るプロセスは、ときに激しくて、辛くて、大変なことです。それと同時に、私たちにはセルフが存在しています。
セルフというのは言葉で説明するよりも、体験的に実感していくものだとも思っています。
まずは私たちの中にある「揺るぎないもの」「大人の自分」そんなところから意識してみるのもいいでしょう。
パーツと家族や社会のシステム
管理者、消防団、追放者は、私たちの中にいるパーツさんということですが、それらの内的なものは、家族や社会というシステムにも存在するということです。
追放者という意味で、社会的に、排除されている人いますよね。社会的な恩恵を受けれていない人が。
管理者ということで、社会を管理する組織、団体、政治があります。追放者(弱い立場にある人)を守ってもくれるけど、排除もされている。
さらに、多くの企業が作るサービスや商品は、消防団な役割がありますよね。依存行為を誘発するものであふれていますよね(笑)
内的な世界は、外的なシステムと深い繋がりがあるという原理原則ですね。
内的家族システム療法とソマティック
多くのパーツさんは、体と深く関係しています。それぞれの体の部位にパーツさんが存在するということもあります。例えば、肩には管理者がいるとか。
体の使い方、姿勢などとパーツは関係しています。例えば、強迫的に「管理」するには、体に力を入れる必要がありますよね。消防団が依存行為をしながら、感情を抑圧するために横隔膜を固めていることもあります。
このようなことから、ただ言語的に、感情的にパーツに関わればいいとうことだけでもないのです。
それぞれのパーツと「身体」が密接に関係しているのです。より効果的にするには、その身体にもアプローチしてく必要があります。
パーツ心理学の可能性
パーツ心理学的に関わると、クライアントさんが理解された感があると言われます。そして、セッション自体も行き詰まりが少なく、効果的です。
全てのパーツには意味があるのです。全てのパーツには大事な役割があるのです。それを認めたり、調整したり、癒したりするのがセラピーの目的とも言えますよね。
内的家族システム療法をはじめ、パーツ心理学的なアプローチには大きな可能性があると思っています。