私たちの中には、
様々なパートさんがいます。
この記事では、カナダ時代の
クライアントさんとの興味深い、
自我状態とのやり取りを紹介します。
それぞれのパーツが
違う恋人を作っていた話!
コンテンツ
自我状態療法って何?
私たちの中には、
様々なパーツがいます。
会社に行けば、
社会的なパーツが主役になる。
家に帰ったら、はしゃいでるような、
こどもっぽいパーツが出ることも。
そのようなパーツを、
部分人格、自我状態と言ったりします。
そのパーツさんに焦点を当てて
心理カウンセリングをする1つが
自我状態療法(ego state therapy)があります。
パーツという概念を大事にする
心理療法って実は、たくさんあるんです。
フロイトから始まり、
ゲシュタルトのパールズ、
ユング心理学、
バージニアサティアの家族療法
さらには、
プロセスワーク、
NLP、
内的家族システム療法、
自我状態療法、
ボイスダイアログ、
などなど、他にも沢山のあります。
とにかく、心理学の歴史は、
パーツ心理学の歴史だったんです!
そりゃ、そうですよね。
人間には、様々なパーツがある。
その人間の心理を理解しようとすると、
必然的に「パーツ」にたどり着きます。
そのパーツ心理学を
近年、トラウマセラピーに
活用しだしただけのことなのです。
その1つに、
自我状態療法ってのがある、
というお話なのです。
トラウマを受けると自我状態はどうなる?
トラウマや虐待を体験すると、
それぞれのパーツが、より解離します。
言い換えると、
それぞれのパーツが統合されていない状態。
パーツさんとの会話がスムーズで
なくなったり、パーツさんたちが
独自の意思を持ち始めたりします。
わかりにくいですよね。
トラウマや虐待を受け続けると
会話できてない機能不全の家族のように
パーツ同士が噛み合ってない。
誰がお風呂の掃除をするのか?
ゴミ出しは誰がやるのか?
娘は夜中になっても帰ってこない?
って感じで、笑。
まとまってないから
コントロールできてない状態ですよね。
自我状態に焦点をあてたセラピーは、
どういったものなのか?
例えば、まず知恵のあるリーダー的な
パーツと話し合っていったりします。
そして、そのパーツに協力してもらい
こどものパーツや
トラウマのパーツについて
教えてもらうこともあります。
もう一つは、頼りになる、
信頼できるパーツにも
働きかけていくこともあります。
やはり、理解するには、
事例をお伝えするのがわかりやすいと思います。
カナダ時代のクライアントさんの事例
ジョージ(40代)はとても成功した
ビジネスマンでした。
彼とのカウンセリングでは
自我状態を中心にやっていきました。
まず4つのパーツ、
自我状態があることがわかりました。
「こどもっぽい」
「社会的」
「落ち着いた」
「クレイジー」
それぞれの自我状態には、
それぞれの恋人がいました。
補足説明ですが、
彼はいわゆる、多重人格、
解離性同一障害ということではないです。
こどものパーツが出てくれば
温かい年上の女性に甘える。
合理的なパーツは社会で働いて、
家庭に帰れば妻がいる。
クレイジーなパーツが出てくれば
パーティーを楽しむ若い女性とはめをはずす。
落ち着いたパーツは客観的で、
距離を取りたがるため、
遠距離恋愛をしている。
ここでは、不倫は道徳的に
悪いとか、そういう話ではないです、笑
パーツに向き合っていくと、
自然に、そのような行動が
減っていくことが多いということです。
自我状態と向き合う
まずそれぞれの自我状態が
どういうものかを確認しました。
そして、それぞれがどのように
ジョージを助けてくれてきたのか、
それぞれの「価値」についても話しました。
この4つの自我状態とかかわり続け、
最終的には「感謝」することが出来はじめました。
すべての自我状態を
統合することが目的ではないんですね。
例えば、カウンセリングを続けると、
「クレイジー」なパーツはだいぶ
落ち着いていきました。
若い女性と次の日まで飲んでいた
などということはなくなりました。
これは体を感じるワークや
セルフケアの効果だったと思っています。
このクレイジーなパーツは
とにかく過覚醒で体の感じ(疲れ)や
感情(つらさ)を無視していました。
ジョージはこの「クレイジー」と対話
を続けて、関係性がよくなっていきました。
そして、そもそもなぜこのパーツが
生まれたのかを理解することで、
共感するようになりました。
パウンダりーのワークも
あと合理的で社会で頑張ってる彼は
バウンダリーのワークなどで
「断ること」を少しずつ覚えました。
とにかく人から頼まれた用事や仕事は
どんなに疲れていてもやり通す彼でした。
断ることで自分を大切に
出来るようになっていったんですね。
まあ、2人で何十セッションもやって
ここまでたどり着きました。
その他の自我状態とは
こどものパーツに関しては
彼の幼少期のトラウマがあまりに
悲惨なものなので
統合、共存するにはまだまだ
長い道のりがあると感じていました。
落ち着いたパーツは
全体的にはあまり触らなかったが、
どこか距離を取りすぎる冷たい性格で、
愛することが出来ない
自我状態だということがわかってきました。
ジョージが恋人を手放して、
妻や子供たちだけを優先させた時に
本当の意味で「愛する」ことを
育てられうのかもしれない。
彼の人生の質が大きく
高まりましたが、
私が、日本に帰国することになり、
特に、こどものパーツに
一緒に向き合えなかったことは
後悔しています。
ただまあ、次のセラピストと
一緒に向き合ってると点では
安心はしています。
今回のケースは、
自我状態療法ってところに
フォーカスしたわけではないですが、
パーツさんや自我状態のことを
少しでも伝わったら幸いです。
自我状態というパーツを統合すべきなの?
よくそれぞれのパーツや人格を
融合させるとか、統合させることが
目的という支援者がいますが、
そうでない時も多くあると思っています。
何を目的にするかと言えば、
共存、相互理解ではないでしょうか。
パーツを無理やり統合させる
怪しげなメソッドも聞いたことが
ありますが、
かなりずれてます、笑。
本来の目的はそれぞれの人格、
パーツ、自我状態が
うまくコミュニケーションをとり、
いい関係を築いていくこと。
その結果、統合ということもある。
多重迷走神経理論からみる?
それぞれの自我状態は
多重迷走神経の理論でも説明できます。
は?
って方は、ポリヴェーガル理論の
記事を読んでくださいね。
要するに、
過覚醒のパーツ
社会的なパーツ
解離したパーツ
とも言えるということです。
3つのシステムも
それぞれが自我状態、
パーツ、モードとも言えますよね。
ジョージの場合は、
紳士的なビジネスマンの彼は
社会的なパーツ。
仕事場では皆から尊敬される存在。
しかし時には仕事場でも、
クレイジーな彼が出そうになる時はあったという。
パーティーでぶっ飛んでる時
のクレイジーなパーツは、
アドレナリン過剰な過覚醒のパーツ。
そして、インナーチャイルド的な、
年上女性に甘える彼は、
ふわっとした感じて解離している。
その彼は性被害などの
トラウマで泣きたくて、
甘えたくて、困っている少年の感じ。
距離をとる落ち着いたパーツは
社会なパーツで平常心を保っている感じ。
もちろんそれぞれのパーツを
より深く理解して、
それぞれが対話していくことも大事ですが、
覚醒したり、シャットダウンする
システムに働きかけることも大事です。
覚醒レベルが上がったものは下げ、
下がったものは上げる、というように。
自我状態療法をはじめ、
パーツ心理学というのは、
トラウマセラピーにおいても
欠かせないものだということが
伝われば嬉しいです。