日本と海外における性被害の支援について(インタビュー第1話)

 

ある大学の研究者とのインタビューを公開します。この研究者は、性被害、男性、LGBT、支援という分野を研究されています。

その研究のお役に立てるならとインタビューをお受けしました。公開してもいいと許可を頂いたので、記事にしました。わかりにくい部分など、軽く編集しています。

 

日本での支援活動の内容

 

聞き手; ではよろしくお願いします。普段されている支援活動などから、どんなふうにされているか教えてもらってもよろしいでしょうか?

 

山口; 普段は、過去に何らかの性被害を受けた男性のための心理カウンセリングということでやってます。少年の頃に受けたときもあるし、大人になってから被害を受けたという男性を中心に、心理カウンセリングを提供しています。

性暴力というところもあるし、もっとおっきな意味で、トラウマというところ。たとえば、虐待とかいじめにあったとか、そういう方々の支援をしています。

男性の性被害もやってると、女性の性被害受けた方(女性サバイバーさん)も、カウンセリング受けれますかって来られるので。

ほかにそれ以外の、たとえば、いじめとかトラウマとか、何らかのそういうのを抱えている方のカウンセリングも、それなりにやっています。

 

 

海外で学んできた経験とかもありながら、トラウマってどうやって解放していくのかみたいなのを、支援者さんたち、心理カウンセラーさんたちにも、対面の講座とかオンラインの講座で伝えています。

 

 

性被害のことをカウンセリングすること

 

聞き手; 私はカウンセリングの世界をよく知らないので、基本的な質問になると思うんですけが… 山口さんが虐待とか性暴力のことに特化するっていうのは、どれぐらい特殊なことなのでしょうか? カウンセリングという世界の中では、どういう位置づけになってくるんでしょうか?

 

山口; 性暴力っていうことを専門にやってるっていう人は、日本では、ほんのごく一部です。性的虐待の専門家というよいうに、もっと何かに特化する専門家が増えてほしいと思っています。どんな人でもカウンセリング出来ます、というのはどんな人もそれなりにしか出来なませんということでもあるので。

パニック障害専門です。過食症専門です。というように。海外ではそのような傾向が強くなってきています。

性的なトラウマに話を戻すと、色々なところで、たとえば病院とか福祉施設とか、開業してやってる心理カウンセラーさんとか、やっていくうちに、「性被害っていうことがあったんだね」とか、「虐待あったんだね」というふうに行き着くことが多いです。

そして、ただ傾聴するとか、変なアドバイスをするとか(笑) 性被害のことを話たら、カウンセラーが「気まずい空気になった」と言われるクライアントさんも結構おられました。

支援者も悪気はないと思うんです。ただ、慣れてないし、どうしていいかわからなくて、慌てるということもあるのだと思います。

最後に、カウンセリングと言っても、様々な団体、個人が色々なところで、色々なアプローチをしています。アプローチも何十、細かく言えば何百って心理療法ってあったりするので。

 

 

性暴力の支援に関わったカナダ時代

 

聞き手; 山口さんが、性暴力のところに焦点を当ててカウンセリングしていこうって思ったきっかけとか、あるのでしょうか?

 

山口; 私はもともとアメリカやカナダに17年ぐらい住んでました。向こうで心理カウンセリングの大学院を卒業して、大学院中に、インターンシップをやる時に、どこでやろうか、いろいろ探しているうちに、唯一見つかったところだったのです。

私が日本人ということは、外国人という扱いになる。インターンシップさせてください、と言っても、向こうが面倒見ないといけないわけですよね。個人的にもしっかり教えてもらわないとだめだし、外国人っていうのもあって、インターン先がなかったんです。

それで、どうしようかと思って困っていた時に、家から歩いて数分のところに、たまたま行ったところが、男性の方のための性被害専門のセンターだったんです。そこでインターンシップをさせて頂くことになったのです。

 

 

だから、その頃は、男性も性被害にあう、少年も性被害にあうっていうのは、何となくは知識的には少しは知ってたけど、現状をあまり把握してませんでした。

バンクーバーというこの狭い地域、その規模は京都府ぐらいの人口です。そんな小さい規模で、この支援センターには、助成金が毎年何千万円とか入ってくるのです。

スタッフ、心理カウンセラーさんたちが10名とかいて。こんな大きな規模でやってるんだ、こういう世界があるんだなっていうのが、大学院生ながらに驚いたことを覚えています。

 

 

北米の性暴力被害者支援の現状

 

聞き手; カナダとか、アメリカでは、男性の性暴力被害者支援っていうのは、結構珍しい位置づけなんですか?

 

山口; 1990年以前は、そんな団体は皆無でした。ぽつぽつといくつか立ち上がってきてみたいなのが、90年ぐらいですかね。

今ではそういう男性で過去に性被害で苦しんでる人が行ける、つながれる支援団体が、大体メジャーな都市にはあるかなっていう感じですかね。だから、日本とは全然違います。

女性サバイバーの方がいける団体や受けれるサポートは、もっと規模が大きいです。かなり手厚くサポートが受けられることが多いです。

 

 

なぜ相談窓口を特化する必要があるのか?

 

聞き手; 男性は男性で支援したほうがいいという背景とか要因とかってあったりしますか? それを聞くのは、たとえば日本の場合は、女性と子ども、というかたちで支援に取り組んでますけど、そこに男性被害者の方、あるいはLGBTの方がそこに入るのが、何か阻害する要因があるんじゃないかって思うんでが。

 

山口; たとえば、「性的な被害を受けた方の専門の支援機関です」と言って窓口を出すと、女性は、ああ、私のことね、と行きやすいですよね。男性の場合、僕も相談してもいいのだろうか、とか男性の自分は相談出来ないのかな、というように思うことがあるということです。

でも、そこで「男性の方のための」ってなると、あ、私のことだという感じで行きやすくなるわけですよね。だから、それ専門の窓口を開くってことが大事。

だから、カナダで勤務していた団体の代表、ドンライト先生は、「まず男性の性被害を受けた方のための窓口を、小さくてもいいから開くことが大事だ」と言われていました。小さくてもいい。

 

 

で、ドン先生も最初は固定電話と机一つ、小さな部屋、まあ小さな部屋っていうか、先生の自宅の一室から始められた。で、やりだしたら、電話がどんどんかかってきたみたいな。で、そのうちセンターとして活動しながら、NPO化しました。

助成金をちょっとずつもらうようになって、1人目のカウンセラーさん雇って育てて、2人目雇って育てて、というように大きくなっていきました。だから、まずはその方々専用の窓口というのがすごい大事なのです。

 

 

日本での男性サバイバー支援の現状

 

聞き手; 山口さんが日本でこのカウンセリングオフィスPomuをやる時に「男性の性被害を受けた方のための」って書いたのも、同じような効果があったと思いますか?

 

山口; そうですね。そこまで、ドンライト先生がやったときくらい電話の数が多かったかっていうと、そうでもないかもしれないんですけど。先生からそういうふう聞いてたので、まずは、小さくてもいいから窓口を開く、ということを意識していました。

だから、1ヶ月目は1人クライアントさんが来られた。2ヶ月目は2人クライアントさんが来られた、というように。それから少しずつ、たとえば、電話だけで相談することも出てきたり。

でも、なかなか日本ってそういうところってオープンではないので、本当に少しずつという部分もありました。

たとえば、私がNPO化して、助成金をカナダみたいにみたいに何千万円みたいにもらえることが出来れば、もっと多くの方が、もしかしたら来られて、そういう専門の心理カウンセラーたちを育ててみたいな感じにはなるのかもしれないですけど。

日本って、なかなか助成金とかもらえないですよね。だから今は個人事業主という形で心理カウンセリングをやっています。

 

 

ワンストップセンターの対応

 

聞き手: 今あるワンストップセンターとかでも、「男性の被害も受けつけます」と書くことに意味はあると思いますか? そういうあり方ってありなのか、性別を分けておくことによって、相談しに行く人が入っていきやすくなるでしょうか?

 

山口; なんとか対応できるのであれば、そう書いて頂いた方がいいです。対象者は、女性、子ども、男性、LGBTの方というように。その方が明確ですよね。利用者、相談者としては相談しやすいと思います。

 

 

性的虐待の後遺症に関しての女性と男性の違いとは?

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インタビューの続きはこちらより(パート2)